I Love You!
□八話
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レイナたちはNICSに行くためのリムジンに乗っていた。バン、レイナ、ランとその向かいではジェシカ、ヒロ、コブラが座っている。レイナは、目線を下に向けていた。
ジェシカ「ケイトのことについては私から謝るわ。ごめんなさい」
ジェシカの言葉にレイナは顔を上げ、小さく笑った。
レイナ「気にしないで。…って言いたいところだけど」
ちょっとへこんだかな…。と手に収められているライトニングを見る。バンはそんなレイナを見てきゅっと拳に力を込めた。
ヒロ「ケイトさんっていつもあんな感じなんですか?」
ジェシカ「バトルになるとああなの。私も困っていて…」
ジェシカの言葉にランが「黙っていればかわいい女の子なのにね」と付け足すように言った。その言葉にジェシカは首を傾げる。
ジェシカ「ケイトは男よ?」
瞬間、時が止まった。そこにいた一同全員がジェシカを凝視した。その数秒後に車の外に聞こえてしまうんじゃないかというぐらい大きな驚きの声が上がった。コブラからも冷や汗がたらりと垂れた。
バン「…お、男、なの…?」
ジェシカ「趣味がちょっと偏ってるけどね」
レイナ「ジェシカとケイトってどういう関係?」
唐突のレイナの質問にジェシカの動きが止まる。しかしすぐに顔を真っ赤にしてしどろもどろに応えた。
ジェシカ「どんなって、小さい頃よく遊んだというか…好きじゃないけど、その、昔馴染みだから仲良くしてる、みたいな?…それだけよ?それだけなんだからね!」
((((ツンデレか…))))
レイナを除いた四人は同じことを思った。片思いかぁ。同じ境遇にいる仲間がいることを知ってレイナは未だに顔を赤くしながら話しているジェシカをみて微笑んだ。
ジェシカ「ケイトにはね、お兄さんがいたの」
いつの間にか話しはケイトの昔話になっていた。ジェシカはさっきまでとは逆で静かに語りかける口調になる。
レイナ「いた…?」
語尾の不自然さに気づいて首を傾げる。ヒロたちも真剣な顔になってジェシカの話しに耳を傾けた。
ジェシカ「年の離れたお兄さんがいたわ。七年前、亡くなってしまったのだけれど…」
お兄さんはケイトが生まれる前からある研究のために日本にいたから実際に二人が会ったことはないの。でも手紙を交換していたみたい。彼は毎日欠かさず書いて送ってたわ。お兄さんの方は忙しいのかたまにしか返ってこなかったけど。お兄さんの写真をみて彼、とても嬉しそうに笑ってた。「これ、僕のお兄ちゃんなんだ!」って。「大きくなったら絶対に会いに行くんだ」とも言ってた。…でもそれは夢に終わってしまった。実験の失敗で彼は命を落としたわ。
バン「なんの実験だったんだ?」
ジェシカ「私も詳しく知らないの。」
ジェシカは俯いて首を振った。誰も言葉を発することができなかった。ケイトにそんな過去があったなんて、
ジェシカ「…ケイトの話はここまで!あんな奴だけど、嫌わないでやってね」
みんなは小さく頷く。そんな中、バンがふと隣に目を向けると眠たそうに目をこすっているレイナの姿が映った。
バン「レイナ、眠いの?」
レイナ「うん、ちょっと……」
でも、大丈夫だよ。というレイナだが、言葉とは裏腹に今にでも眠ってしまいそうにうつらうつらとしている。そんなレイナを見て、ジェシカは微笑みながら優しく言った。
ジェシカ「眠いなら、寝ても大丈夫よ。まだ着くのには少し時間があるし、着いたら起こすわ」
その言葉にレイナは申し訳なさそうに「…じゃあ、お言葉に甘えて」といって静かに目を閉じた。よほどさっきのバトルで疲れたのだろうか。閉じた瞬間、レイナの意識は遠のいていった。
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