ZZZ
□幸せ。
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3年4組、窓側の一番後ろ。学生では一番ベストな座席。
「のん!」
『………』
「…おーい」
『…え、あっ、なに?』
「めっちゃ意識飛んでたよ?大丈夫?」
『うん、大丈夫!』
でも、あたしは全然嬉しくない。
だって、ここからじゃ、あんまり見えないから。
『三宅くん…』
「ん?何か言った?」
『ううん、言ってなーい。てか、……仁菜、仁菜ん席に三宅くんいるよ?』
「え、あ、ほんとだっ!うーっ、のん 席遠いよおー!もうっ!」
『あはは。ほら、早くいってあげなよ。』
「うんっ!また後でね!」
うれしそうに三宅くんに駆け寄る仁菜。
あ、三宅くんと目があった。
……えー、丁寧にクチパクでありがとうっていってる。
優しいなぁ…
『だから、好きなんだけどね。』
机につっぷせてつぶやく。
こういうとき、この席でよかったなっておもう。
近くで仁菜と三宅くんがはなすのなんて、見たくない。
あたしが三宅くんを好きになったのは、中一のとき。
弓道部にはいってたあたしは、体育館の横を通って道場に行こうとしてた。
その日は春から夏へ変わることを主張するかのように暑かった。
だから、それまで閉まっていた体育館の窓が開いていた。
別に興味があったわけでもないけど、やっぱり今まで見えていなかったものが見えるようになっていると気になった。
だから、チラッと覗いた、それだけだったのに。
ボーンッ!!
『きゃっ!?』
バスケのボールがあたしの方に飛んできたのだ。
窓からでて、当たるーーー!
そう思い、ぎゅっと目をつむった。でも、衝撃はいっこうにこない。
恐る恐る目を開けると、
「当たってない?!大丈夫?!」
今より声の高い三宅くんが、いた。
『………だ、い…じょぶ……』
心臓バクバクだけど、ね。
「よかったー……」
心から安心したような表情。あたしの胸がドキッとする。
「三宅!早くしろ!」
「あっ、ハイ!ごめんね!」
先輩に呼ばれてまた走っていった。
この日から、あたしは三宅くんに恋をしている。
『…………』
その三宅くんと、友達が付き合うだなんて
考えもしなかった。