短編小説

□君という付加価値
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今年の夏は本当に暑い。







「海行きたいわー、海」なんて隣でぶつぶつ言ってるユウジに「えー、暑いから嫌だ外に出たくない」と言ったら無言で頭を叩かれた。だって外なんか出たら一瞬で溶けるって、夏の日差しに一瞬でも隙を見せたらやられるってお母さんが言ってた。(べ、別にマザコンじゃないんだから!)




「ちょ、いたっ!頭悪くなるからやめてよ」
「これ以上悪くならへんから安心せえ」
「うっわ、失礼な!」




確かに私は特別頭良い方じゃなかったけど、それでもユウジよりは良いよ!なんて、また叩かれるのは目に見えてるから口には決して出さないけど、心の中ではそんなことを考えながらまたさっきの続きを見るために、読みかけの雑誌に目を落とした。




「なあ、」
「んー」
「…どっか行きたいとかないん?」
「いや、別に」




「ふーん、ほなええわ」と言ってそっぽを向いた彼は、なんだか少し怒っている…というより拗ねているようで、なにも喋らなくなってしまった。そうなってくるとさすがに心配で、私なにか変なこと言ったかなあ、とかなんか気に障るようなことした?なんて考えてはみるけど全く思い当たらない。




「ねえ、どうしたの?さっきから喋らないけど」
「…お前は、」
「ん?」
「お前はどっか行きたいとかないんか、」




「久しぶりに休み取れたんに、」そんな風に言って私とは反対側を向いたユウジの耳は真っ赤に染まっていて、やっと彼が拗ねていた理由が分かったような気がした。




「ユウジくーん」
「おん、」
「私、ユウジと居るだけで楽しいから」
「ちょ、おまっ」
「だから、お家でゆっくりしよう」




ちょっとベタすぎたかな、とは思ったけどこれが本当の気持ち。でも「お前ほんま…恥ずかしいっちゅーねんアホ」なんて言いながらも嬉しそうな彼の顔を見ていると、ずっとこんな時間が続いて欲しいと願わずにはいられなかった。













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短いです、ごめんなさい!

タイトル:確かに恋だった




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