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□七夕にお願い
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「あ、今日って7月7日?」
「おん」
「どないしてん急に」
「いやほら、七夕じゃん」
「せやで?なんや今気付いたんか」
「おっそ」
「うっざ。なに謙也くんのくせに気付いてたわけ?」
「俺のくせにってなんやねん。ちゅーか当たり前やん、浪速のスピードスターは飯食うんも早けりゃ七夕に気付くんも早いっちゅー話や」
「ごめん意味わかんない」


机の下でいじっていた携帯のディスプレイで今更ながら気付いたのは今日が七夕だと言うこと。6時間目で今日最後の授業もそろそろ終わるってころに気付くなんて本当に今更だ。



「よし、願いごと書こう」
「なんに書くねん」
「短冊とかないで?」
「ふせんって形が短冊みたいじゃない?」
「「ちっさ」」


百均で買ったカラーふせん。のりつきメモ貼って剥がせる見出し付箋、と書かれたピンクと水色のそれをペンケースから取り出す。まあ大きさ的には短冊の20分の1くらいしかないような小ささだけど、長方形で色がついた紙ってことに変わりはないから良いよねうん。



「なんかノリで買ったけど実際ふせんとかそんなに使わないし、好きなだけ使ってたくさん願いごと書いていいよ」
「ほんなら…四天宝寺のバイブル白石蔵ノ介、遠慮なく書かせてもらうで」
「それ前半の部分を言う必要あった?」
「願い事の数やったら、浪速のスピードスターの方が上やっちゅー話や!」
「いやそれスピード関係なくない?」


私の突っ込みなんて聞いていないのか、2人はさっそくピンクと水色の付箋をペラペラと捲り取ってそれぞれ何かを書いてゆく。2枚目3枚目4枚目5枚目と、中学生には見えない見目の男2人があんな小さい紙に次々と必死で何かを書いている様と言ったらまあ結構な不格好というか滑稽というか。てゆうか本当にいっぱい書いてるみたいだけど、何をそんなに叶えて欲しいんだか。まあこんな奴等でもテニスは頑張ってるみたいだし、これが全国制覇とかだったらちょっと感動するよね。




「ちょ見せて見せて」
「ええでー」
「アカン、書き足りんわ」


なになに?白石は「全身サイズの鏡がほしい」「植物園に行きたい」「行きつけの店の健康グッズを全制覇したい」「パーフェクトなテニスのマンネリ化をどうにかしてほしい」等その他もろもろ。んで謙也くんは「もっと斬新な面白い形の消しゴムを見つけたい」「新しいベルトが欲しい」「一生NOスピードNOライフ」「イグアナもう2匹くらい飼いたい」「侑士より俺の方が全てにおいて上やっちゅー話や」とか色々。


「くっだらねぇえ」


なんかもう、お前らに期待した私が馬鹿だった。一生懸命なんか書いてると思ったらこんなことかよ。くだらない実にくだらないよ君たち。もうこの際、感動なんか求めないからもっと夢のあること書こうよ。





「もっと他にないの?」
「んなモンまだまだあるで」
「いやだからこーゆー冗談半分なくだらない感じじゃなくてね。マジなやつよ」
「マジやっちゅーねん!」
「尚更がっかりだよ」
「ほな何ならええねん」
「せや。言うてみ!たとえば?」
「だからあ、テニス部で全国制覇できますように!とか」
「「………えー」」
「えーってあんたらさあ…」


全国制覇したいんじゃないの?と言ってみれば2人は顔を見合わせて今度は「「あー」」と言った。なにその気の抜ける返事。ほんとにやる気あんの?なんかもういろいろテニス部大丈夫なの?




「そりゃあ勿論やで」
「したいに決まっとるやん」
「じゃあそれ書きなよ」
「アホやなあ、それやったら七夕に願うより自分で練習した方がええやろ?」
「神頼みなんかせんでもなあ、実力で優勝もぎ取ったるっちゅー話や」




…あ、ちょっと格好良い。


(それなら全国制覇を七夕の願い事にするのは、あんたらの友達である私の仕事かもね。なんて言ったらなんかすごい感動した目で見られた。うわあ、ちょっと恥ずかしい)





七夕にお願い







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たすく様より!
なんか急に七夕ネタが読みたくなって書いてもらいました!えへへ
もうねこの皆アホな感じが萌える←
たすく、ほんとありがとう!

虚空(たすく様)








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