12/24の日記

01:26
百合界のカリスマ
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「溺れてしまいそう」

不意に隣で呟かれた言葉に、天王はるかは重いまぶたをゆっくりと持ち上げて瞬きを繰り返す。
そして、乱れた息を整えるように深呼吸をしている存在に、殊更優しく語りかけた。

「みちるが溺れるなんて、世界がひっくり返る前兆かな?」

「…あら、起きていたの?」

ふ、と息を吐いて気だるげにこちらを見つめるのは海王みちるである。
その頬は紅潮し、瞳はまるで水面のようにゆらゆらと揺れていた。
白い喉を仰け反らせて、悩ましげに息を吐く様にはるかは困ったような笑みを浮かべた。

「みちる、いやに色気を振りまいているのは何かのお誘いなのかい」

額に張り付いた深海の色の前髪をそっと指で掻き分けてやると、気持ちよさそうに目を閉じる。

「どうした、みちる?体調でも悪いの?」

いつもと少し様子が違うパートナーに、はるかは悪い予感を感じた。
顔色が悪いような気がする。
高調した頬は、もしかしたら発熱のせいかもしれない。

「なんだか、息が苦しいわ」

弱々しい声は、いつもの張りもなくか細く消えていくようだ。
はるかは起きたばかりの重い体をみちるに覆いかぶさるようにずらして、そのまま自らの額と彼女の額を合わせた。

「…熱いな」

その体温の高さに、思わず顔をしかめた。

「はるかの体温は、気持ちの良いくらい冷たいのね」

目を閉じていたみちるはいつの間にか再び潤んだ瞳を開き、はるかと至近距離で見つめ合うようにしていた。

(ああ、みちるの瞳はまるで海そのものだ)

まるで吸い込まれるように、はるかはその瞳から視線を外せなくなってしまうのだ。

「やっぱり、誘ってるだろ?」

「病人に、その言い草はないんじゃなくて?」

いつの間にかはるかの首に回された、みちるのたおやかな両腕にそっと力が加わる。

「苦しいの、息が、できなくて…」

甘く囁くような声が、はるかの唇に吸い込まれるように消えていく。

(溺れるのは、君じゃなくて僕だ)

お互い荒くなっていく息遣いに、はるかはぼんやりと思った。


君という海に溺れている、なんて、厭な病にかかってしまったものだ、と。

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