二次創作

□マフラー
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「アーチャー!!ちょっと!アーチャー!!」

遠坂邸に一人の少女の金切り声が響き渡った。
ある晴れた日のことである。

「何か用か、凜」

少女が叫んだと同時に、目の前に色黒な体格の良い男が現れる。

「買い物に行くの!ついてきて」

同行するのがさも当然の如く命じるのは、遠坂家の娘である遠坂凜、アーチャーと呼ばれた男の主人である。
アーチャーは小馬鹿にしたような目で主人である少女を見つめて軽く笑った。

「凜、私は今から浴槽の掃除をするつもりだったんだがね。君が昨日命じただろう?」

「それは帰ってきてからで良いわ。ともかく来て」

「いや、浴槽の掃除にもタイミングというものがあってだな、夕方には君も入浴するだろう?掃除してからちょっと時間をおいて入浴しないと洗剤の匂いなどが…」

ぶちっという音が凜の頭に響いた。

「うるっさい!つべこべ言わずについて来るのよ!!さっさと実体化しなさいよ!」

キシャーッという音が聞こえてきそうな勢いで怒る凜の様子を見て、アーチャーは溜息を落とす。

「全く、君は人使いが荒いな」

「悪かったわね」

「悪くはないがね」

余裕ともいえる表情で不敵な笑みを浮かべながら頷く男に、凜はにべもなく言い放った。

「行くわよ」

「ふむ」

「あ、あと、今日は寒いから、これ」

こちらを見ないままぶっきらぼうに紙袋を押しつけられる。

「む、何だね?」

「あげるわ」

紙袋を広げてみると、中には赤いマフラーが入っていた。

「これは、マフラー?」

「け、毛糸が余ってたから!捨てるには勿体ないから暇つぶしに編んでみただけよ!!」

「ほう?」

「何にやにやしてるのよ!!あんたの為じゃないんだからね!!」

「分かった分かった。ありがとう、凜。とても嬉しいよ」

最近寝不足だと言っていた凜の言葉を思い出しながら、少し不格好なマフラーを巻いてみた。

「暖かいな」

「よ、良かったわね」

そして、ようやくアーチャーは理解した。買い物に行くから実体化しろというのはマフラーを渡すための口実だということに。
素直じゃない凜の行動に、くすぐったいような感情を持て余しつつも今日は大人しく荷物持ちに付き合おうと心に決めるのであった。

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