二次創作

□看病
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「凜々蝶さま…お加減は如何ですか?」

心配そうにこちらの様子を覗きこむのは、僕のSS(シークレット・サービス)御狐神くんだ。
目に涙を浮かべて悲しそうな顔で見つめてくるその眼に、心配するな、という気持ちを込めて見つめ返した。

「ふん、ただの風邪だ。これくらい寝ていれば治る。君がいると睡眠に集中できないから自室に帰りたまえ」

風邪がうつるといけないと思って敢えて冷たく言い放った。心配してくれる彼の気持ちは嬉しいが、その内自分に風邪をうつせとか言い出しかねない。

「凜々蝶さま、御いたわしい…。僕でよければ凜々蝶さまのお風邪を」
「うつせ、とか言うなよ」

想像するに易しいその先を自分の言葉で遮っておく。悲しそうな顔がより一層歪められた。

学校内で風邪が流行り始めて、僕も昨日から熱が出た。幸いインフルエンザなどの流行ものではなかったが、喉の痛みと高熱で今日は学校を休むことにしたのだった。

「折角の看病だが、気持ちだけいただいておこう。僕は本当に寝てれば大丈夫だから、君も今日は自由に過ごしてくれ」

「いいえ、看病させて下さい。僕は凜々蝶さまのお傍でお仕えさせていただくことでのみ幸せを甘受できるのです。こんなときにお傍におられずしてどうして貴女のシークレットサービス足り得ましょうか?どうか、どうかお傍に…」

「嬉しそうだな」

「滅相もない」

悲しそうだった顔は、僕の傍に、というフレーズから少し口元に笑みを形造っていた。

「兎に角、今日はつきっきりでご看病致します。何とでもお申し付けください」

「…申すも何も、僕は寝てるだけだぞ」

「お気になさらず、ごゆっくりお休みください」

どうせ何を言ってもああだこうだと返されて居座る気だろう、と相手の意図を見とって僕は諦観した。
そして、ゆっくりと意識を手放した。

どれくらい眠っていたのか、突然、額に柔らかい布のようなものが触れた。
前髪の生え際に沿って羽毛でなぞられる様に辿っていくその布の感触が、僕を深い睡眠からゆっくりと掬いあげていく。

「…すみません…起こしてしまいましたか」

残念そうに笑うのは、当然御狐神くん。見ると、その手にはタオルが握られており、僕の額を軽く撫でていた。

「汗、拭いてくれていたのか」

「結果的に睡眠の邪魔をしてしまい、申し訳ありません。しかし、そのままにしておくと返ってお体を冷やしてしまいますので」

言いながらも、その手を休めることなく滑らせ、額から頬、顎へとタオルをあてていく。
何となくくすぐったい。というか、彼の目が笑っていない。

言いようもない嫌な予感に、彼の腕を掴んでタオルを止める。

「あ、あとは自分でできる。ありがとう」

「いいえ、僕にさせてください。凜々蝶さまの玉のような肌を傷つけないように丁寧に拭わせていただきますので」

口元は笑顔だが目が笑っていないまま御狐神くんは僕のタオルを首筋にあてがう。
くすぐったさに身を捩らせながらも彼の腕を止めようと、掴んだ両手に力を入れる。

「……ふっ…」

くすぐったい感覚が邪魔をして上手く力が入らない。
そのまま首周りにタオルを押し当てられて、鈍った感覚が敏感さを取り戻し始めた時、部屋のインターフォンがノンビリと鳴り響いた。

「おや、残念です…」

クスッと黒く笑った御狐神くんにちょっとした恐怖を覚えながら、寝巻の襟をキュッと首元へ手繰り寄せる。

顔が熱い。

玄関へ向かう彼の背を見やり、鏡を覗くと真っ赤な自分の顔があった。

―もしかして熱が、上がったんじゃないか?

玄関から無表情なかるたと、威勢の良い渡狸の僕を心配する声を聞きながら、不整脈を整えるため深呼吸した。

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