二次創作
□春眠暁を覚えず
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連勝は思う。
睡眠とは眠り始めのウトウトしている時が一番心地良いものだ、と。
特にマンションの屋上で、春の暖かい日差しを浴びながらの昼寝は最高だ。
「何だっけ、こういうの…。ミンミン…いや、シミンあかずき…?」
「春眠暁を覚えず、よ」
目を閉じて独り言を呟いていると、鋭い突っ込みが入った。
「おお、それそれ」
わざわざ目を開いて確認するまでもない。連勝のシークレットサービスの野ばらだ。声はゆっくりと近づいてきているようだった。
「こんなところで暢気にお昼寝だなんて、とっても良い御身分ね」
野ばらはとても優しい声色で話しているが、何となく言葉に棘がある。
「…あれ、何か怒ってる?」
「やあねぇ、怒ってなんかないわよ?」
いや、怒ってるな。閉じていた目を開くと、ムスッとした表情の野ばらが、連勝を見下して立っていた。
美人が怒ると怖いよなぁ、と連勝は背に汗が流れるのを感じる。
「…野ばらちゃんも一緒に寝る?」
「でかい図体で甘えた声出されたところで、全く萌えないわ」
「萌えられたいわけじゃないんだけどね」
しばらくこちらを睨むように見ていた野ばらだが、突然連勝の寝転がっている横に腰を下ろした。
「ああもう、つまらないわ!凜々蝶ちゃんは御狐神とどっか行っちゃうし、カルタちゃんは渡狸とデートに行っちゃうし、ちのちゃんはお仕事だし!!!」
「…ふーん」
「折角の!休日なのに!ラウンジにはむさい野郎どもしかいないなんてっ!!」
「そりゃあ残念だったなぁ」
「で、仕方ないから屋上に来たのよ」
盛大な溜息を吐きながら、野ばらは空を仰いだ。
「でもまあ、こういう何もしない一日っていうのも偶には良いものよね」
さっきまでの激情はどこへやら、一転して静かに野ばらは呟く。
「本当、良い天気ね」
「………」
「ちょっと、聞いてるの?反ノ塚………って、寝たのね」
あどけない顔で寝息を立て始めたパートナーに、自然と笑みが浮かぶ。
「寝顔はまあ、可愛くないことはないわね」
春の日差しに心を絆されたのは、どうやら連勝だけではないようだ。
野ばらも体を倒して連勝と並んで空を仰いでみる。
「偶には、こいつと昼寝でもしてみようかしら」
そうしてゆっくりと目を閉じた。