短編-Short-
□君に願う
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黒「七夕、雨であっさり終わっちゃいましたね」
休憩時間、隣の席の彼がポツリと呟いた
「あー、この時期梅雨真っ盛りだからあんま晴れないと思うよ」
黒「そうですね…」
驚いた、彼、黒子テツヤくんが七夕好きのロマンチスト(?)なんて
そういえばいつも本を読んでいる気もする
天の川なんて見たの何年前だろうか
幼い頃は短冊にお願い事書いてはしゃいでたっけ
街中にたくさん置いてある笹一本にひとつずつ………あ
「黒子くんは小さい頃どんなお願いしてた?」
黒「え?」
「短冊とかで」
一日中無表情な彼は一瞬キョトンとした顔を見せ、そして少し(本当に微妙なくらい)微笑んだ
黒「そうですね…毎年変わってたような気もしますが、たぶんテレビのヒーローや宇宙飛行士のような格好いいと思える存在だったかと」
「だよねー、私も周りもお嫁さんだの花屋さんだのケーキ屋さんだの…今思えばそういう血筋じゃなきゃお姫様なんてなれないのにね」
黒「ありましたありました、でも楽しかったから良かったんですよ」
懐かしむような彼の顔。というかこうしてじっくり見てみるときれいな顔してるな…
「黒子くんてさ、綺麗だね」
黒「……綺麗?」
「あ、男子に言うことじゃなかったかな。でも本当に綺麗」
ただの文学少年に見える。窓辺にいたら雰囲気バツグン。
消えてしまいそうな印象はあるけど。
でも彼確かバスケ部だったかな…
「この前クラスが違う中学のときの友達と話してて
『隣誰になったー?』
『私スポーツ少年、って感じのイケメン!』
『うわ、いいなぁ、私冴えない変なやつだよー』
『##NAME1##は?隣』
『え、黒子って男子』
『黒子?結構珍しい苗字だけどそんなやつ入学式いたっけ?』
『はぁ!?いたし!水色の髪だから目立ってたって!』
『水色!?それこそいた!?赤いやつはいたけど』
『それは斜め前っ!』
「…みたいな会話したんだけど、実際のとこ黒子くんて目立たない?」
黒「………っ」
あれ?
私変なこと言った?
だって黒子くん、驚いたような、それでも泣いてしまいそうな顔をしてしまったから
黒「やっぱり、君は僕が見えるんですね…」
「うん?」
見えちゃいけないものなのか…!?
黒「僕、影薄いんです」
見えないくらい、
黒「だからよく見失われたり、存在も知られてなかったりするんですよ」
見えないくらい・・・?