ふわふわ

□三章
1ページ/37ページ


貴方に貰った花を・・・僕はまだ覚えています。

「―花は、好きか―」

これはいつの記憶でしょう。

僕の中を深く、浅く、呼びかけるように波がきます。

縮まることのない距離にもどかしさを覚え、僕は諦めて目を閉じました。

いくつもの強い望みが僕を翻弄していきます。


花を、摘まなくちゃ・・・


何故かは分からないけれど、無性にそう感じました。










???side

微かに鼻腔を擽るように香った匂いにゆるりと目を開いた。

だがそこには、いつもと変わらない部屋がただ広がっているだけだった。

重くのしかかるような眠気を振り払うように身を起こすと、直ぐに「木の葉」達がやってきた。

「木の葉」達に二言、三言今日の指示をし終えると、軽く身支度を整えた。


コンコン、


「俺だ」

来客を告げる音に了承の意を示すと、見知った男の顔が現れた。

男―この学園の生徒会長花王明は、傲慢なオーラを漂わせながら、つかつかと俺の元へと歩み寄った。

「・・・」

「ふん、相変わらず食えない奴だ」

花王はく、と口角を上げてにやりと笑った。

「・・・用件は」

花王の発言を無視して静かな声で尋ねると、花王は気にする素振りも見せずに向かいのソファーにどかり、と腰を降ろした。

緩やかな沈黙が流れた後、花王は少しだけ表情を引き締めて口を開いた。

「今日の新入生歓迎会についての話だ」

「・・・あぁ」

―新入生歓迎会

喜び、哀しみ、妬み・・・様々な感情が一瞬にして心の中を吹き抜けていく。

一番心を占めるこの感情を表にはおくびにも出さずに、俺は微かに微笑むと口を開いた。

何処からか流れてきた花の薫りが、胸の奥に燻るこの感情を、ちり、と粟立たせたような気がした。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ