ふわふわ
□三章
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貴方に貰った花を・・・僕はまだ覚えています。
「―花は、好きか―」
これはいつの記憶でしょう。
僕の中を深く、浅く、呼びかけるように波がきます。
縮まることのない距離にもどかしさを覚え、僕は諦めて目を閉じました。
いくつもの強い望みが僕を翻弄していきます。
花を、摘まなくちゃ・・・
何故かは分からないけれど、無性にそう感じました。
???side
微かに鼻腔を擽るように香った匂いにゆるりと目を開いた。
だがそこには、いつもと変わらない部屋がただ広がっているだけだった。
重くのしかかるような眠気を振り払うように身を起こすと、直ぐに「木の葉」達がやってきた。
「木の葉」達に二言、三言今日の指示をし終えると、軽く身支度を整えた。
コンコン、
「俺だ」
来客を告げる音に了承の意を示すと、見知った男の顔が現れた。
男―この学園の生徒会長花王明は、傲慢なオーラを漂わせながら、つかつかと俺の元へと歩み寄った。
「・・・」
「ふん、相変わらず食えない奴だ」
花王はく、と口角を上げてにやりと笑った。
「・・・用件は」
花王の発言を無視して静かな声で尋ねると、花王は気にする素振りも見せずに向かいのソファーにどかり、と腰を降ろした。
緩やかな沈黙が流れた後、花王は少しだけ表情を引き締めて口を開いた。
「今日の新入生歓迎会についての話だ」
「・・・あぁ」
―新入生歓迎会
喜び、哀しみ、妬み・・・様々な感情が一瞬にして心の中を吹き抜けていく。
一番心を占めるこの感情を表にはおくびにも出さずに、俺は微かに微笑むと口を開いた。
何処からか流れてきた花の薫りが、胸の奥に燻るこの感情を、ちり、と粟立たせたような気がした。