お礼小説+
□むにむに!!
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「ちょーうちょー、ちょーうちょー、なーのーはーにーとーまーれー…」
一人の少年が、大きな木の根元に座りながら、ぼんやりと空を見上げていた。
木々の隙間から漏れ出した夏の日差しが、小さな少年の柔らかい髪をキラキラと反射させた。
小さい唇からは呟くような歌声が漏れ、普段は大きいであろう瞳はとろんとし、今にも閉じられそうになっている。
「なーのーはーに、…あーいー…たーら……れーんーげ…にぃ………」
今は丁度正午なのか、太陽は頭上高くで輝いていた。
少年は暑さをあまり感じないのか、ついに木の根元に丸まって目を閉じた。
小さな歌声は止み、すーすーという寝息が聞こえてくる。
ふわふわとした栗色の髪が、時たま風に揺られて微かに動く。
少年の周りには小さな蝶が飛び交い、小鳥も近くで羽を休めていた。
動物に好かれるらしい少年は、何者にも邪魔される事なく夢の世界を満喫していた。
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正午より少し前、一人の青年が、買い物袋を片手に人通りの少ない道をゆっくりと歩いていた。
つんつんと遊ばせている髪の毛は見事な銀色で、瞳は深い藍色をしていた。
トゥルルルルー、トゥルルルルー、
額に微かに汗を滲ませながら当てもなく歩いていると、不意に胸ポケットの携帯がなった。
「……」
青年は気にせずに歩みを進めた。
トゥルルルルー、トゥルルルルー、
「……」
たまに青年と通り過ぎる通行者は、青年の顔を見た途端に顔を青ざめさせて走っていく。
青年は睨んでいる訳でもないのだが、生まれつきの強面の為か、何もしないでも人が避けていくのだった。
トゥルルルルー、トゥルルルルー、
「……ハァ…」
鳴り止まない携帯に重いため息を吐くと、青年は漸く携帯に手を伸ばした。