お礼小説+

□むにむに!!
1ページ/3ページ



「ちょーうちょー、ちょーうちょー、なーのーはーにーとーまーれー…」


一人の少年が、大きな木の根元に座りながら、ぼんやりと空を見上げていた。

木々の隙間から漏れ出した夏の日差しが、小さな少年の柔らかい髪をキラキラと反射させた。

小さい唇からは呟くような歌声が漏れ、普段は大きいであろう瞳はとろんとし、今にも閉じられそうになっている。


「なーのーはーに、…あーいー…たーら……れーんーげ…にぃ………」


今は丁度正午なのか、太陽は頭上高くで輝いていた。

少年は暑さをあまり感じないのか、ついに木の根元に丸まって目を閉じた。

小さな歌声は止み、すーすーという寝息が聞こえてくる。

ふわふわとした栗色の髪が、時たま風に揺られて微かに動く。

少年の周りには小さな蝶が飛び交い、小鳥も近くで羽を休めていた。

動物に好かれるらしい少年は、何者にも邪魔される事なく夢の世界を満喫していた。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


正午より少し前、一人の青年が、買い物袋を片手に人通りの少ない道をゆっくりと歩いていた。

つんつんと遊ばせている髪の毛は見事な銀色で、瞳は深い藍色をしていた。


トゥルルルルー、トゥルルルルー、


額に微かに汗を滲ませながら当てもなく歩いていると、不意に胸ポケットの携帯がなった。


「……」


青年は気にせずに歩みを進めた。


トゥルルルルー、トゥルルルルー、


「……」


たまに青年と通り過ぎる通行者は、青年の顔を見た途端に顔を青ざめさせて走っていく。

青年は睨んでいる訳でもないのだが、生まれつきの強面の為か、何もしないでも人が避けていくのだった。


トゥルルルルー、トゥルルルルー、


「……ハァ…」


鳴り止まない携帯に重いため息を吐くと、青年は漸く携帯に手を伸ばした。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ