【リクエスト】
□壁に耳あり
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分厚い雲に覆われた夜。月明かりの届かない細道は闇に包まれて。
一人歩きながら屯所へと戻る途中、遠くに意外な人物を捉えた。
そいつはいつも俺たちから逃れて。例え運良く捕まえ監獄送りにしたとしても、必ず戻ってきてしまう。
何ともしぶとい奴。
平生の俺なら奴の名を叫び、バズーカをぶっ放すだろう。そう、今まで散々繰り返してきた『追い掛けっこ』。いい加減に飽きてきた。そろそろケリをつけやしょう。
暗闇の中、俺は気配を消しながら奴に近付く。そしてそっと刀に手を掛けたその時、僅かに洩れた俺の殺気。
奴は瞬時に察知すると、
「むっ、真選組か」
振り向き様に呟きながら走り出した。
ちくしょう、最後の最後で気付かれるとは俺もまだまだ。しかし今は悔しんでいる場合では無い。折角の機会、ここで逃して堪るものか。奴の逃げ足が速いとはいえ、素早さなら俺だって負けねぇ。何がなんでも捕まえてやる。
あと少し。
あと少し。
奴に手が届くまで、あと少し。
そして、
「桂、つーかまーえた」