弐.
□不思議な出来事
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夜、野郎の部屋を訪れて。
「うわ。何ですかィ、この部屋は」
俺は襖を全開にすると、
「ちょっと煙草臭過ぎ。煙の所為で部屋が曇ってやすぜ」
勝手に空気の入れ換えを始めた。
これじゃあ、俺まで身体を悪くしちまう。
「仕方無ぇだろ」
野郎は筆を置くと大きく伸びをする。
そして、
「疲れた・・・」
言いながら畳の上に仰向けで転がった。
風呂上がり、湿りを含んだ艶やかな黒髪。着物姿で気怠げな表情にムラッとして。
俺は開けたばかりの襖を閉めると、
「土方さん、したい」
その煙草臭い口にキスを落とした。
しかし、
「駄目だ。これが終わってからだ」
野郎はよっと身体を起こすと俺を無視して再び筆を走らせる。
そのあしらい方に苛ついて。筆を取り上げてやろうかと思ったその時。
「あと一時間くらいで終わる」
「・・・・・・」
なんだ、あんたもヤリたいんじゃん。
互いに求め合うセックス程気持ちいいものはなくて。
決して一方通行では無い。俺もあんたも同じくらい気持ちよくなれる。
そんな予感を胸に、俺は鼻唄まじりで寝支度を始めた。