弐.
□今と未来の違い(第一部)
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「おいっ!総悟、待ちやがれ!!」
野郎が遠くから追いかけてくる。既にエレベーターの中、俺は『閉』のボタンを押した。
「じゃ、土方さん、お先です。きちんと12時までには帰ってきなせぇ。午前様は許しやせんぜ」
「あ、ちょ・・・!待て!!」
あと一歩。野郎の手は届くことなく、エレベーターの戸が閉まった。
「ふうっ・・・」
時刻は午後九時。一人エレベーターの中、俺は溜め息をつく。昼間突然とっつぁんから呼び出されたかと思えば、『新年会』という名の憂さ晴らし。絡み酒のとっつぁんは実に面倒で。飲んだくれオヤジは近藤さんと野郎に任せ、俺は一足先に屯所へ戻る。
「あー、疲れた」
大して呑んでいないのに。この疲労感は何だろう。エレベーターの中、壁にもたれ掛かり、独り言を呟いたその時。
「え・・・まじで」
突然エレベーターが停止する。何か非常事態でも起こったのだろうか。そして、一瞬の暗闇。
「!!!」
しかし、直ぐに明かりがつくと、何事も無かったかのよう、再びエレベーターは動き出した。
「・・・何でィ、ビビらせやがって」
下降していくエレベーター。地上まであと少し。しかし、それは五階で止まった。ドアが開き、一人の男が乗り込む。
そして、俺は思わず目を疑った。
「えっ、ひじ・・・かたさん?」
「そ、総悟・・・」
そこには隊服でも着物でもなく、スーツに身を包み、少し顔を強張らせた野郎がいた。