参
□猫土方の生態*(朝〜夕)
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「なぁ、なんで俺ばっか?」
「え、何でって俺があんたに盛ったから」
「馬鹿じゃねーの!?お前、ほんっっっと馬鹿!こんな姿にしやがって、ふざけんな!!」
朝から野郎が怒鳴っている。目を吊り上げて、青筋立てて、耳までピンッと立っている。その耳はフサフサの真っ黒い毛に覆われて。きっと尻には黒いシッポも生えているに違いない。
「ちょっと失礼」
俺は野郎の着物を捲り、下着をずり降ろした。
「おぉ、生えてる」
尾骨のあたりから、スラッとした黒い尻尾。今まで『飴』とか『入れ替わり』とか、野郎に仕掛ける度に俺まで巻き込まれて。尽く失敗してきたけど、今回は成功だ。
「『生えてる』じゃねぇよ!」
「ぶっ!!」
野郎に蹴られて、俺は畳の上に転がった。いそいそと下着と着物を直す野郎を見上げなが、ニヤリ笑みを浮かべる。あぁ、今日一日楽しみだ。24時間限定ネコ土方の出来上がり。昼はどうして遊んでやろうか、夜はどうして虐めてやろうか。様々な考えがぐるぐる巡る。
「ったく、冗談じゃねぇよ」
野郎はぶつくさ言いながら手拭をキュッと頭に巻く。そして何故か袴をはいた。
「えっ!耳隠すの?」
「たりめーだ。こんな姿で仕事が出来るかってんだ」
「じゃあ袴は?」
「尻尾が目立つ。こんなんで隊服なんざ着れるわけねぇ。不本意だが、今日一日はこれで仕事だ」
「隊服、ケツんとこ穴開けてやりやしょうか。そこから尻尾だせば?」
「ほざけ」
「ねぇねぇ、土方さん」
「何だよ!」
「全身にボディペインティングしていい?耳と尻尾だけじゃなくて全部黒猫になりや・・・」
「るせぇぇぇェェ!!!てめぇはさっさと仕事に行け!」
声を上げながら無理矢理俺を部屋から追い出す。しかし、野郎は思った以上に動揺はしておらず。もっと取り乱すと思ったのに。俺の悪戯に耐性が出来てしまったのだろう。これじゃあ駄目でさ。野郎が腰抜かすような、もっと斬新な悪戯が必要だ。
そんな事を考えながら、ふと気になる事が頭を過る。
「土方さん・・・」
スッと襖を開けながら、
「『にゃー』って言わないの?」
スパンッ!
無言で襖を閉められた。