参
□その日、その時
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原因は思い出せない程、些細な事だったと思う。
「死ね、土方」
「てめぇが死ね」
いつものやり取り。奴はそう言って部屋を出ていくはずなのに、その日はやけに突っ掛かってきた。
「ねぇ」
「なんだよっ」
「納得いかねぇ」
「るせーな、後にしろ」
苛々が募り、俺は煙草を手に取る。奴はそれを掠め取ると、
「今」
そう言って煙草を握り潰した。
はぁ・・・、俺は溜め息をつきながら、
「いい加減にしろ。たまの休みなんだ。放っとけ」
「休みだから時間あるでしょうが。放っとかねぇ」
話がどんどん拗れていく。俺ら何でこんな喧嘩してんだ?お互いに頑として譲らない。それは平行線をたどるばかりで。
思わず吐いた言葉。
「はぁ、てめぇにゃウンザリだ」
一瞬、奴の顔が歪む。それ以上何も返してこない。すぐに悟った。『傷付けた』と。
暫くすると、奴は黙って立ち上がり俺の部屋をあとにした。
チッ、俺は小さく舌打ちする。あぁ、くそ。
まぁいい。後でいい。普段の喧嘩に少し輪を掛けたようなもんだ。
思いながら、煙草を吹かす。