参
□職権濫用
1ページ/7ページ
真夜中、刃と刃を交える音が響く。
「沖田隊長!」
ギリギリと互いに一歩も譲らず、緊迫した空気が張り詰める。真選組隊士たちが刀を構え動けない中、彼らの目の前で刃を交えているのは一番隊隊長沖田総悟。そして、一人の男。
**********
チッ、何でィこの男。やけに馬鹿力じゃねーか。
今、まさに一戦交えているのはある指名手配の男。偶然発見した隊士からの緊急要請。『自分たちでは歯が立たない』とのこと。こりゃ確かにあいつらでは荷が重い。
力だけの剣なら勝てる。簡単に。だが、こいつは違う。技を備え、剣を振る。強い。俺は珍しく苦戦を強いられる。
そして僅かなミスが、最悪の結果を招く。
刃を交えた状態での一瞬の弛緩。体勢を立て直すためのその一瞬。しかし『体勢を立て直す』それが最大の判断ミスだった。奴はそれを見逃すこと無く、的確に急所を狙ってくる。刹那、何とか致命傷は免れた。切尖が首を掠り、肝を冷やす。
「逃げたぞっ!追え!!」
「隊長!大丈夫ですか!」
「どけっ、てめぇら!ついて来るんじゃねぇ。俺一人で充分だ!!」
ちくしょう、舐めやがって。ぜってぇ仕留めてやる。叩っ斬ってやらぁ。
苛立ちが募り、俺は急いで奴を追った。
「隊長、そいつは天人です!姿を変えることが出来ます!気を付けて!!」
遠くで隊士の警告が聞こえた。
姿を変える?何だ、変化でもすんのか?よく分かんねぇが、通りで今までなかなか捕まらなかったわけだ。