夢置場

□愛しているなら、この手をとって。
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なんで、怒っているんだろう…。


目の前を大股で歩いている佐伯くんの背中をぼんやりと眺めながら、夕暮れ時の帰り道を歩いていた。


一緒に帰らない?

そう誘ったのは私。


周りに取り巻きの女の子達がいないことを確認しながら、いつもの意地悪そうな笑顔で


「店あるから、急ぐぞ」


と言ってくれた。


この街に再び戻って来た朝に出会った、ひねくれ者の仮面王子。


私の前では、少し…かなり、あまのじゃくだけど。


他の女の子の前で見せるような作った笑顔は、私の前では見せない。

それが最近、嬉しかったりも、する。


「何、笑ってるんだよ。」


突然目の前に佐伯くんの不機嫌そうな顔が現れた。


あれ?私、笑ってた?


「ふぇ?」


「ふぇ、じゃない。ニヤニヤして、…何か良いことでもあったのかよ。」


ニヤニヤって…、せめてニコニコにして欲しいなぁ。

「ニヤニヤ…してた?

「してた。」


間髪入れずにかえってくる返事に、また笑ってしまう。


「佐伯くんの事、考えてたの。」


「…え。」


からかうような、それでいて不機嫌そうな佐伯くんの表情と、歩いていた足が止まった。


あれ、変な事言ったかな?。


「佐伯くんどうしたの?」
「…ウルサイ。」


あ、前に向き直っちゃった。


「ねぇ…?」

「ウルサイ、だまれ。」


う…声が震えてる…。


怒ったの?


なんで怒っちゃうかなぁ…。

怒らせたいわけじゃないのに。



やっぱりなんか悪い事いっちゃったかなあ?


「あ、まって、待って〜」
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