糸が切れるまで 1

束縛もしなければ、約束事もしない。お互いに干渉もしない。
暗黙のルール。

「今から目茶苦茶に犯して」

そんな君からのメール。
「今から会いたい」

とは何度か送られてきたけど夜勤続きで断り続けてそんな今日は夜勤明けで君も遅番上がり。
ずっと待ってたのか、待ち切れなかったか、素直を通り越して直球過ぎる。そんなに淋しかったか…
早朝の駅裏のコンビニで待ち合わせ指定しメール送信。

いつもは人目に付かないように駅から離れた小さなビジネスホテルを利用するが、この時間帯なら駅裏のラブホテルでも大丈夫だろう。
一服してから原付のエンジンをかける。
コンビニにはもう先に君が着いていた。俺に気付くと険しい表情で近づいて来る。これが今から抱かれる女の顔かよ…

「はい」と缶コーヒーを渡され受け取り合図のようにホテルに向かう。

キャバクラやスナックが密集しているこの街はゴミがあちこちに散らばっている。それを漁る烏の群れ、酔い潰れてベンチにもたれ掛かる若い男、タクシーを待つキャバ嬢、とにかくこの街は欲望と虚栄で汚れているのだ。

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