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□薬の代わりに
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「五月蝿い…。」
任務帰りで疲れている身体にガンガンと響くギアッチョの声に溜め息が出た。耳を塞いでも入ってくる声の音量にもう少し静かに出来ないものかと思いながら部屋に向かう。
部屋にいても聞こえる怒鳴り声で僕の疲れは最高潮に達した。いつものようにチョコラータに処方された薬を口に含んでミネラルウォーターで流し込む。ストレスが溜まっているときは眠りが浅くなって、身体の疲れがとれないのでチョコラータに処方してもらった睡眠導入剤を使っている。
薬を飲み込んでベッドに向かおうとすると意識が途切れた。また薬の調合変えやがったな畜生と頭の隅で思いながら、僕は床に倒れ込んだ。前と同じ量では眠りに入ることが出来ないので、この薬はもう睡眠薬並みの効果がある。
入団直後に検査を受けたとき、僕の身体は薬に馴れやすい体質だと聞いた。毒薬にも強いが同時に治療薬にも身体は馴れてしまうので、医者には厄介な人間だとチョコラータに溜め息を吐かれたことを覚えている。
ぴったり四時間で目を覚ますと自分の部屋では無かった。が、この薬臭い匂いには覚えがある。
「…チョコ先生?」
チョコラータ「仲間に何と説明してるんだ、あと薬はベッドで飲めと言っただろうがこの馬鹿」
部屋に入ってきた瞬間にこの説教である。が、自分が悪いので言い返すことが出来ない。勿論心配をかけたくないチームの仲間には何の話もしていないので僕の第一発見者はさぞかし驚いたことだろう。
「…あぁ、それで君のところに診せに来たのか」
チョコラータ「何かミスでもして手術がいるような傷でも作ったかと思えば 寝てただけだから大変イラついた」
真顔でこんなことを言う医者は世界中のどこを探してもこの人くらいしか見つからないだろう。人の痛みに悶える顔が好きな辺りかなりのドSだよなぁ…。と、少々ぼんやりしながら思っているといきなり叩かれた。
「…痛いです」
チョコラータ「何か失礼なこと考えただろうが」
口に出してはいないのだから叩くこと無いじゃあないかと小さく文句を呟けば睨まれた、相変わらず大人気ない人だ。
帰るときに処方薬だと渡された袋の中には『ホットミルク』とだけ書かれた紙が入っていただけだった。何ですかこれはと抗議をしに行くと、馬鹿につける薬はないからなと返された。
チョコラータ「そんなに薬が欲しいのなら此処に来て飲め」
「は!?何ですかそれ!」
チョコラータ「…あんな思いをするくらいなら目の前で倒れられた方がましだ」
「 つまり心配したと」
チョコラータ「どんなミスをして大怪我をしてもおかしくないからな、マナは」
「 今サラッと名前呼びました?」
チョコラータ「良いか?次からは此処で飲むんだぞ」
「はい」
チョコラータ「約束だぞ、マナ」
素直に返事をするのは貴方の事を好きだと自覚したからで 薬を飲むのは月一で貴方に会いたかったからだと気付いてしまって 名前を呼ばれたとき顔が赤くなったのは やっぱり貴方の事を好きだと再確認したからなのかな
「チョコラータ、薬飲みに来た」
チョコラータ「 毎回毎回ホットミルクごときで…。」
「処方薬でしょう?ホットミルク それに飲むときは此処でって言ったじゃないですか」
チョコラータ「くっ 揚げ足を取るな!」
文句を言ってはいるが、マナ専用と書かれたマグカップが有ることを僕は知っているし、ベッドを借りて寝る度に寝顔を見に来ていることも知っている。ちなみに、何だかんだ言って嬉しいんじゃあないですか?と、顔を見上げると赤くなって顔を逸らすことも新しく解った。
適温の処方薬を飲みながらチョコラータを見ていると目があったので笑いかけてみた。
チョコラータ「お前 邪魔しに来たのか?」
「いえいえお気になさらず」
チョコラータ「完璧に邪魔だ、早く寝ろ」
「飲み終わったら寝ますよ」
いつもよりゆっくり ちょっとずつ飲んでいると、苛ついたようなチョコラータに抱き上げられた。
「!?」
チョコラータ「自業自得だからな 寝るまでベッドの中でお相手願おうか」
「寝ます寝ますすみませんでしたァァァァァァァァァァァァァァァァッ」
そんな言葉も意味を成さず 僕の貴重な睡眠時間は泡のように消えた。
取りあえず主人公はごちそうさまされたと思われます。眠れない方にはホットミルクお勧めですよ、別に身長伸びませんけどね。以上、毎日牛乳飲んでても小さいRё.がお送り致しましたー。