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□バレンタイン
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今日はバレンタイン、つまり恋人達が愛を確かめ合う日。日本では女性が男性にチョコレートを渡すというイメージが強いが、此処イタリアではお互いに花束やプレゼントを渡す事の方が一般的だ。
と、言うことで僕も大事な恋人に何かをプレゼントしようと思うのだが…。
「 何にしよう」
ちゃんとしたものを渡さないと ちゃんとしたことをしないと彼がキレるのはもう学習している。だがその“ちゃんとしたもの”や“ちゃんとしたこと”が、解らないので朝から悩んでいるのだ。
「ホルマジオー、ギアッチョの好きなものって何ー」
ホルマジオ「お前。」
偶然リビングを通りかかったホルマジオに真顔で言われてちょっと照れた。だが『僕をプレゼント☆』なんて言ったら頭を本気で殴られるに違いない。僕はMではないので殴られる趣味はない。
ホルマジオ「そうだな 甘すぎるものは苦手な筈だ」
「ありがとうホルマジオ!」
ホルマジオ「気にすんなって、良いもん渡せると良いな」
ホルマジオはニッと笑って僕の頭をぽんぽんと撫でた。本当の兄貴みたいだなぁとニコニコと笑っているといきなり襟首を掴まれ引っ張られた。不意にだったのでカエルが潰れたような変な声が出た(メメタァじゃないよ!)。
「ギアッチョ? おかえり」
ギアッチョ「…ただいま」
振り向くと手は離してくれたのだがホルマジオを睨み付けている。流石にホルマジオに悪いと思いギアッチョの服の裾を控えめに引っ張るがギアッチョは無視しているのかずっとホルマジオを睨み続けている。
「 ギアッチョの好みとか聞いてただけだよ」
ギアッチョ「 頭撫でることねーだろ」
ホルマジオ「はいはい悪かったな、好きなだけいちゃついてろ」
ホルマジオは苦笑しながらリビングから出ていった。それを確認してからギアッチョはソファーに座り、僕を膝に乗せてぎゅーっと抱き締めた。
「ギアッチョ冷たい!」
ギアッチョ「仕方ねぇだろ、外から帰ってきたんだから」
「風邪ひかない?大丈夫?」
ギアッチョ「マナ が暖めてくれたら大丈夫」
ずっと僕の事を『お前』とか『おい』とか呼んでいたギアッチョだが、最近は二人きりの時限定で少し顔を赤らめながら名前で呼んでくれる。
僕はそんなギアッチョが可愛くて大好きなのだが口に出すと絶対にもうしてくれないのが解っているので黙っている事にする。
ギアッチョ「 フォンダンショコラが食いたい。」
「甘さ控えめで?」
ギアッチョ「ん」
ギアッチョはコクリと頷いた、いつもの元気がないので今回の任務はかなり大変なものだったらしい。
「解った、作るから寝てて」
ギアッチョ「 あぁ」
ソファーに横になったギアッチョにブランケットをかけて僕は台所に向かった。ギアッチョの要望通り甘くなりすぎないようにビターチョコを使うことにした。チョコの溶ける匂いに釣られてかメローネが寄ってきた。
メローネ「ギアッチョよく寝てるね、やっぱりマナが近くにいるからかな」
「邪魔しに来たかメローネ」
メローネ「何でそうなるの!?」
「存在が邪魔だ!」
メローネ「邪魔しないから俺にも作って」
「ギアッチョに凍らされて良いなら」
メローネ「それは嫌だな」
むー と、口を尖らせるメローネ。チョコは買ってあると言うと手作りが良いんだと駄々を捏ねられた。熱したチョコレートかけてやろうか…。
そんな危険な考えが起きたちょうどその時、イライラした表情の僕に気づいたリゾットがメローネを引きずっていってくれた。お礼の言葉と共にチョコレートを渡すと上機嫌になった、相変わらず子供っぽい一面があるらしい。
「出来た…。」
メローネの妨害にも負けず作り上げたフォンダンショコラは我ながら良い出来で思わず顔がほころんだ。
ギアッチョ「早いな」
「うわ!? 起きてたの?」
ギアッチョ「匂いで起きた 食って良いか?」
「どうぞー、コーヒーも淹れといたから」
ギアッチョ「どこ行くんだ?」
「いや、皆にチョコ投げてこようかと」
ギアッチョ「渡さないだけましだが やるのか…。」
「だって早く渡してギアッチョと一緒に過ごしたいし」
ギアッチョ「許可する。」
取りあえず廊下に出て一番最初に会ったイルーゾォに全部のチョコを託しておいた。何で俺が…?と言うもっともな呟きが聞こえたがこの際無視することにする。
ギアッチョ「早い イルーゾォ辺りに託しただろ」
「うん」
ギアッチョ「マナ、ちょっと隣に来い」
「え?うん」
ギアッチョ「良いか?一度しか言わないからよく聞け」
「うんうん」
ギアッチョ「 俺はお前に会ってから変わった、最近全くキレてねぇし怒鳴らねぇし」
「(確かに…。)」
ギアッチョ「それはお前を大事にしたいからだって最近気づいた、守るものがあると強くなれるとも 一生守るから俺と結婚しろ」
「よ 喜んで!」
ギアッチョ「今日 遅くなって悪かった、これ受け取りに行ってたからな」
ギアッチョが取り出した小さな箱には指輪が入っていた、一体どこまで受け取りに行ってたんだろうと少し笑いたくもなった。照れ屋な彼はきっと誰にもバレないようにとわざわざ遠い街まで注文に行っていたんだろう。
「ありがとう 僕も大好き」
僕がギアッチョにキスしようと顔を近づけると鏡から皆が雪崩れ出てきてギアッチョがブチキレたのはまた別のお話。
ツンがほぼ無いギアッチョ だと…。大事なところではちょっとへたれてるギアッチョだと可愛いと思います!これもバレンタイン限定でお持ち帰りオケです(´`*)