DQ[小説
□However
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「ククール?どうしたの?」
トロデーン城の中庭でぼーっとしているククールに、エイトが問い掛けた。
「ん?別に。そろそろオレも旅にでも出ようかと思ってさ。」
ラプソーン討伐後、聖堂騎士団を抜けたククールは、エイトのおかげもあってトロデーン城にお世話になっていたのだ。
「旅って…もしかして僕らに気遣ってくれてる?いいんだよ?トロデ王も歓迎してくれてるしさ」
エイトは不安そうな顔でククールの隣に腰掛けた。
「そんなんじゃねーよ。オマエも知ってのとおり、オレはこの素晴らしい容姿からモテるんでね、世界のあちこちに女の子を待たせてるわけよ♪」
「ふーん…」
自慢げに話すククールとは裏腹に、エイトは眉をよせる。
「なんだよそのツラは?オレがいないと淋しいのかな〜エーイトくん♪」
ククールはエイトをからかって顔を近付けて見せるとエイトは気悪そうにその身体ごと押し返した。
「そんなわけないだろ?ボクはククールには幸せになってほしいんだよ…」
「オレに?」
かけがえのない仲間―ヤンガスもゼシカもそしてククールも…。
エイトにとって世界の破滅を左右する時を一心に心を寄せあい、戦い、そして旅の行く先々で笑ったり泣いたり、家族というものに免疫がないエイトにとって仲間とはイコール家族のような存在なのだ。
「ククールは…お兄さんに会いたいんでしょ?」
「ハァッ!?何だよそれ?」
図星だったのか、兄の名を急に出されて頭に血が上ったのか…思わず声が裏返ってしまった。いや、公正なさずともあきらかに前者であろう。
「僕、知ってるよ。ククールが毎日その指輪を眺めながら悲しそうな顔してるの」
エイトが指差したククールのズボンの右ポケット―兄から聖地ゴルドで別れ際に託された騎士団長の指輪が今も大切にしまわれているのだ。
「フッ…馬鹿になっちまったもんだねオレも。アイツ…マルチェロとはもう関係ないって思ってるのにさ…」