Dream4
□らせんの鎖
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わたしは息をしている。なのに地表よりも空を近くに感じるのはなぜだろう。タワーオブヘブン―天国の塔。この場所にそれを強いられているのかもしれない。
高らかに響く音色があった。アデクさんの鳴らした鐘だ。いつも見ている、豪快さと朗らかさの合わさった暖かな笑顔が嘘みたいに思えるのは、曇った鏡を覗き込むように、隠された姿との距離感が狂ってしまったからなのか。それとも…
「悲しい音ですね」
勝手な妄想、という可能性もある。しかし鐘が奏でたのは確かに悲哀、そして孤独だった。
「そう聞こえたのならば、そうなのだろう」
わたしが頷くと、雨が降っているわけでもないのに足元に滴が落ちた。
生き物のからだなんて、どうせいつかは土に還る。だから、死ぬのは決して怖くない。何よりも怖いのは、大切なものを失うことだ。
同情か怯えか、募る想いは言葉にならず、ただただ塔の屋上を濡らしていく。
「おいおい、何を泣いておるのだ!わしは君を悲しませにここへ来たわけではないぞ!」
力任せに頭を撫でる大きな手は、わたしの知るアデクさんの手だった。
ぬくもりが恋しくなって、その身体にすがりついた。―どさくさに紛れて何を。客観視している自分が嘲笑っていたけれど、息が苦しくてそれどころじゃない。
無くしたくないと思った。涙を掬ってくれる指も、力強く抱き締めてくれる腕も、優しい心音も、全部、全部。
「さぁ、降りようか」
「…はい」
呼吸を整える。血液が体中をぐるぐる、巡っているのがはっきりと伝わってくる。
鐘は少しも揺れていない。わたしには何を歌わせることができるだろうか。
例のイベントをネガティブに解釈したらこうなった。