⇒Merry-San:Take5
「………さすがにちょっと怖いなあ」
深夜。友人からの帰り道。暗い夜道。満月。
不吉な要素がそろいぶみの帰り道に少し怖さを感じる。
恐る恐る進んでいたが、冷静になろうと一度歩みを止め、大きく深呼吸してから再び進み始めたその時、
♪〜〜♪〜
「ひっ!!?」
携帯が鳴り始めた。
あまりの驚きに声をひきつらせて肩をはねる。
けれど、考えるとおどろきはしたが、少し安心する。
携帯をかけてきた友人に付き合ってもらおう。帰り着くまで話をしながら歩けば不安なんてなくなるだろうから。
そう安直に考えてから相手も観ずに通話ボタンを押した。
『今晩は。俺は『メリーさん』。
今、君がさっきまでいた友人の家にいるよ』
「…………………………え?」
それだけ言われて、プツンと切れた。
『メリーさん』?
それって、それってまさかあの都市伝説の――――。
あまりにも急な出来事と恐怖でしばらく(と言っても数分)固まっているとまた電話が鳴る。
恐る恐る手を伸ばし、確かめようと勇気を振り絞って通話する。
『俺は『メリーさん』。今ゴミ捨て場の前にいるよ』
それだけ言われて切られた。
友人の家からここまでくるところに、ゴミ捨て場があった。
薄々気づいていたけれど拒否したい話にようやく確信をもって。すぐに駆け出した。
彼は今噂の『メリーさん』で間違いない。
都市伝説だって、所詮迷信だって思ってたのに!!
必死で駆け抜けているさなか、また着信。
出たくない、出たくはないけど、
『出ないなんて選択肢は君にはないよ?
俺は『メリーさん』。今公園にいるよ』
いつのまにか、何かに操られるようにして携帯の通話ボタンを押していた。
耳元でまたあの男性の声。それからプツリと切れる音。
もう何が何だか分からなくなって兎に角逃げようとして走り回って。いつの間にか家についていた。
「はぁ……はぁ、」
振り返る。誰もいない。
少しだけそのことに安堵し、息を軽く整える。
と、同時に。
♪〜〜♪〜〜
携帯が鳴った。
鳴った。鳴っている。鳴ってしまった。
固まった思考と身体。
それなのに動く手。
自然と携帯に手が伸びて通話ボタンを押した。
もう、それはどうしようもなくて、
『『メリーさん』今、君の後ろにいるよ』
「え、」
嘘だ。
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。
脳が思考を停止し拒否し、身体はその『声』が聞こえた方へ振り返った。
「あ………」
振り返ったときに見たのは、とてもきれいな黒い男性の深い笑みと血のように赤く光った瞳。
そしてそれが私が見た最期の光景だった。
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