イナゴ 夢小説
□告白
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屋上は人気の告白スポットだ、と天馬くんたちがはしゃいでいたのを思い出した。
翌朝、珍しく朝練がなかったのだが、僕はいつも通りの時間に学校へ来て、独り屋上から校庭を見下ろしていた。
紅音「告白スポットかぁ……」
僕は昨日僕に告白をしてくれた女の子を思い出した。
僕はどうすればいいのだろう?
何事も経験?
でも、そんな気持ちで付き合っていいのか……
僕は忘れられない霧野先輩の言葉を思い出す。
『紅音にはその子と付き合ってほしくない』
やっぱり、サッカー部のマネージャーが恋愛にうつつを抜かしてるのはダメだろう。
霧野先輩のお陰で、少し決心がついた。
断る理由もできた。
今は部活のことに専念したい、と言えばあの子もわかってくれるかな……
僕が吐いた溜め息は風に飛んでいった。
すると突然、がちゃり、と屋上のドアが開く音がした。
僕は反射的に物陰に隠れる。
ドアの向こうから現れたのは可愛らしい女の子。
彼女はあまり一般生徒と話さない僕でも知っている、学園のアイドルだ。
……こんなに近くでみるのは初めてだが、女の子らしくて、やっぱり可愛かった。
僕は直感した。
ああ、彼女はこれから告白されるのだろう、と。
彼女はきっと誰かに呼び出されたのだ。
なぜならここは告白スポットとして名高い屋上。
気持ちの整理をつけようとこの場所に来てみたが、とんでもない場面に出くわしてしまった。
……相手の男の人が来る前に、屋上を出ていった方がいいだろうか……
そんなことを考えているうちに、もう一度ドアの開く音がした。
ここまで来たら、逃げられない。
せっかくなら学園のアイドルに告白する勇敢な男子生徒の顔を見てみようか、という好奇心に負けて、僕はちらっと顔を出した。
そこにいた男子生徒は、神童先輩だった。
「やっと来てくれたんだね、神童くん」
女の子のかわいい声が聞こえた。
神童先輩の口元が動いた。
声は聞こえなかった。
風が強まった。
二人が何を話しているのかはわからないが、風に吹かれながら話す二人はとても絵になっていた。
僕は素直に、お似合いの二人だと思った。
「神童くん、私と付き合ってくれないかな?」
女の子が言った。
お似合いの二人、美男美女のカップルなんて素敵じゃないか。
心の中でそう呟くと、何故か心が痛んだ。
神童「すまない。少し、考えさせてくれないか」
神童先輩の声が聞こえた。
女の子は笑顔だった。
どうやら、先輩は告白を断らなかったらしい。