イナゴ 夢小説

□お兄ちゃん
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 僕は肩を叩かれたので、勢いよく振り向いた。

すると、僕の頬にむにゅ、と何かが突き刺さる。
それは、人差し指だった。


紅音「あ、き、霧野先輩!」

霧野「別に後をつけていたワケじゃないからな」

 霧野先輩は僕のほっぺをつつきながら笑う。
霧野先輩の隣にはもちろん神童先輩がいた。



紅音「し、神童せんぱい……っ!」

霧野「こころなしか俺の時より嬉しそうだな」
霧野先輩はぐりぐりとほっぺに指を刺す。


紅音「い、痛いです……っ」





狩屋「ちっ、せっかくの幸せタイムを……」
霧野「何か言ったか、狩屋。」

狩屋「……なんでもありませんよ」

 僕がマサキくんを横目でみると、彼はなぜか不機嫌そうだった。





霧野「それで、最初から全部話は聞かせてもらったが、」

狩屋「はあっ!?」
紅音「さ、最初からですか?最初からって、どこからですか?」

神童「狩屋の「紅音。」からだ。」

それってホントに最初の最初じゃないか!


霧野「ずいぶん狩屋が美味しい思いをしているから、邪魔をしたけどな。」
狩屋「最低ですね」



 霧野先輩とマサキくんが睨み合っている。
僕は神童先輩に助けを求めた。



紅音「せ、先輩……」
神童「お兄ちゃんって呼んでくれても構わないぞ」

神童先輩が笑顔でいった。
それは今まで見たことのないくらい、にこやかな笑顔だった。




紅音「えっ……え!?」

霧野「あ、紅音。俺のこともお兄ちゃんって呼んでくれていいからな。」
狩屋「お、お前ら何言って……」


 そうか、最初から僕らの会話を聞いていたということは、神童先輩と霧野先輩が僕にとってはお兄ちゃん、という話も聞かれたということだ。



霧野「ほら、紅音。蘭丸お兄ちゃん、って言って」
紅音「え!?そ、そんなの、なんか恥ずかしいですよ!」


霧野「言え」
紅音「命令形は反則だっていったじゃないですか!」


どうしても命令されると断れないのだ。


霧野「紅音。先輩の言うこと、聞けるよな……?」

神童「霧野、目が怖いぞ。」

 僕は霧野先輩にせかされて、口をもごもごと動かす。


 先輩の命令、というか年上の人の言うことは聞かなければいけない。
これは幼い頃から僕に刷り込まれていることだ。



神童「紅音、別に断っても……」
紅音「いえ、先輩の命令は絶対です!」


神童「………」



 僕は意を決した。
大丈夫。かなり恥ずかしいけど、たぶん僕なら言える。
いや、たぶんじゃない、絶対言える!
これは先輩のためだ!
僕なら、出来る!!


僕は拳を握りしめた。


神童「おい、霧野。紅音が化身だしそうな勢いなんだけど……」
霧野「よし、来い!なんなら胸を揉んでもいい!」
神童「………。」


 僕はもう半分泣きそうだったが、顔を勢いよくあげて、霧野先輩をみた。
霧野先輩が意地悪な顔で笑いながら僕を見下ろす。

僕は重たい口を開いた。







紅音「ら……蘭丸おにいちゃん………あんまりいじわるしないでください……」


霧野「っ……!」

紅音「お兄ちゃん、僕、ちょっとはずかしいです……」

とは言ってみたが、一度言ってしまうと意外と吹っ切れた。
しかもちょっと楽しい。

紅音「蘭丸おにいちゃん。どうして顔が赤いんですか?僕、何か悪いことを……」
僕は霧野先輩ーーーもとい、蘭丸お兄ちゃんに手を延ばした。
が、その手が触れようとした瞬間。


霧野「ディ、 ディープ・ミストっっ!」

霧野先輩が必殺技名を叫んだ。
技名の通り、辺りが濃い霧に包まれる。

紅音「せ、先輩!?」


しばらくして、霧が晴れたが、既に霧野先輩は遠くに行っていた。



紅音「よ、よくわからないですが、霧野先輩の必殺技がこんなに近くで見れるなんて、感動です!霧野先輩、かっこいいなぁっ!」







神童「狩屋、よく毎日紅音と一緒に会話なんて出来るな……」

狩屋「だから極力しゃべらないようにしているんじゃないですよ。下手な会話すると危ないですからね」
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