イナゴ 夢小説
□マネージャーの仕事。
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紅音「し、失礼します!」
僕はサッカー棟の監督室のドアをノックした。
陰鬱な気持ちで5、6時間目を過ごした僕だったが、ここまで来るともうどうにでもなれ、という思いだった。
鬼道「入れ。」
ドアの向こうから鬼道監督の低い声が聞こえた。
最近は鬼道監督も忙しいらしく、あまり練習に顔を出さない。
久しぶりに聞くその声は、威圧感たっぷりだった。
僕は身震いする。……やっぱり怖い。
ドアの取っ手に手を掛ける。
その他の部屋のドアより、少し重い気がした。
椅子に座ってパソコンの画面を見ている鬼道監督に、僕はゆっくり近づいた。
鬼道監督は、なかなか言葉を発しなかった。
僕は沈黙の威圧感に耐えた。
鬼道「紅音。」
紅音「は、はいっ!」
緊張に思わず声が上ずった。
鬼道「先日、狩屋が練習中に倒れたそうだが……」
鬼道監督は部活の早退届を見ながら話す。
鬼道「ここ一週間、狩屋の担当はお前だったそうだな。……これは、マネージャーの仕事をしっかりできてない、ということではないのか?」
僕は唾をのみこんだ。
鬼道「選手の体調管理は最も重要といってもいいマネージャーの仕事だ。それを怠ってしまったということが、どれだけ大変なことかわかるな?」
紅音「はい。」
そう返事をするしかなかった。
理由が何であれ、マサキくんが倒れてしまったのは、やっぱり僕のせいだ。
僕がマサキくんの考えを汲むことができなかったからだ。
鬼道「退部しろ、とまでは言わないが、以後気を付けろ。」
紅音「……はい。」
鬼道監督の言葉は重く、僕の心に突き刺さった。
紅音「失礼しました。」
僕は礼をして、監督室を後にした。
監督の言うとおりだ。
僕はもっとしっかりしなくてはならない。
マサキくんと仲良くなれたからって、最近は少し浮かれていた気がする。
もっと気を引き締めて、マネージャーの仕事をしよう。
僕はそう決心した。