イナゴ 夢小説

□憧れの雷門中サッカー部!
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 ボール磨きを終えたのは、予鈴の鳴る15分前だった。
予鈴10分前に職員室にくるように言われていた僕は神童先輩に報告して、急いでサッカー棟を飛び出した。
今日はサッカー部事体の朝練はなかったようで、他の選手を見ることができなかった。
 それでもキャプテンの神童先輩と話し、しかも手伝いまでさせてもらえたことは、とても貴重な体験だった。

……もう神童先輩と話す機会も、サッカー棟に入ることもないだろうけど。


紅音「でも、話せてよかった!」

 憧れの選手と話せたことの興奮は覚めないまま、僕は職員室に向かって走った。





 教室に入って、僕は転入生として自己紹介をした。
教室のクラスメイトのまなざしは、決して友好的とはいえないものだった。

 これは、予想していたことだ。
名門校、雷門中にいきなり転入生。
一般生徒であっても噂を耳にして、フィフスセクターの管理サッカーについて知っているものは少なくない。

きっと彼らは僕をフィフスセクターからの「スパイ」だと思っているのだろう。




 僕は静かに与えられた座席に座った。





 休み時間も放課後も、僕に話しかけようとする生徒はいなかった。
代わりに生徒たちは僕をみながらコソコソを話をしていた。


僕は逃げるように教室をでる。


 予想はしていたけど、ここまでとは正直、思っていなかった。
憧れていた雷門中での学校生活は、想像以上に辛かった。




 俺はふと窓からサッカー棟のグラウンドを見た。
サッカー部の選手たちが練習をしている。





……もっと近くで見てみたいな……




 僕はふと思って、急いで首を振った。
そんなことしたら、余計にクラスのみんなに怪しまれるに決まっている。

下手をすれば、退学になってしまうかもしれない。


 僕は諦めて、校舎を出た。
サッカーボールを蹴る音が聞こえる。
その音は、まるで僕を誘っているようだった。

紅音「ちょ、ちょっとだけならいい……よね?」


僕は校門に向かっていた足をターンさせた。






紅音「う、うわぁ……」
 僕は茂みの中からサッカー部を観察する。
黄色いユニホームを着た雷門中サッカー部の選手たちが、パス練習をしていた。


紅音「こんなに間近でみれるなんて!」
ストーカーのようなことをしながら、不審者をエンジョイする僕。

 サッカーボールを蹴る大きな音がした。
高く上がったボールを、僕は見上げる。
ボールはどんどん近くなっている気がした。

紅音「あ、あれ?」

 確実に、ボールは僕を目掛けて落ちてきている。
しかも、すさまじい速度で。
紅音「えっ…え!?」

 頭にゴーンという音が響いた。
ボールは草の中に転がっていく。

今日は頭を打ってばかりだ。
僕はそんなことを思いながら、倒れていく。

 すると、もう一度、とどめを刺すかのように、後頭部に木の幹が当たった。

紅音「あっ……」

痛い、という声すら出ない。

僕の視界は歪んで、どんどん暗くなっていった。
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