イナゴ 夢小説
□告白
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霧野「はあっ!?こ、告白された!?」
紅音「声が大きいですっ!」
昼休み、僕は廊下を歩いていた霧野先輩を引っ張って、校舎裏に連れてきた。
先輩は不思議がりながらも僕についてきてくれて、今に至る。
どうして先輩を連れてきたのかと言うと、僕は今朝、告白をされてしまったからだ。
紅音「ど、どうしましょう……」
霧野「よし、一発シメにいくぞ!」
拳を握りしめて歩き出す霧野先輩を僕は焦って止めた。
紅音「シメないでください!相手は女の子です!」
霧野「え……お、女……?」
紅音「そんなにびっくりしないでください!僕は男なんですから、普通は女の子から告白されるんです!」
少しだけ、霧野先輩に相談したのは間違いだっただろうか、と思った。
でも、失礼だけど神童先輩は色恋沙汰に疎そうだし、マサキくんには軽くあしらわれそうだったので、やっぱり霧野先輩しかいないだろう。
霧野「まあ、紅音もモテないことは無いだろうと思ってたけど……相手が女か……」
紅音「な、なんでそんなに怪訝な顔なんですか!」
霧野先輩は顎に手を当てて何かを考えているようだ。
霧野「いや、俺や紅音みたいな女顔は「霧野くんと並ぶと自信なくすんだよね…告白する子ってホント勇気あると思う!デートとかしたくないよね!」って言われるのが普通だ。」
紅音「え、そんなこと言われたんですか!?」
霧野「いや、立ち聞きした。」
紅音「……そうですか………」
それは直接言われるよりも辛いモノがありそうだ。
霧野先輩は少しだけ落ち込んでいるように見えた。
霧野「で、フッたのか?」
紅音「あ、いえ……その……」
霧野「ま、まさか付き合うことになったとか言わないよな!?」
霧野先輩が僕の肩を強く掴んだ。
真剣な霧野先輩の視線に僕は息を詰めた。
紅音「か、考えさせてくださいって……言いました……」
今朝、突然告白されて驚いた僕は、逃げるようにそう言った。
好きとか、付き合うとか、そういうことに致命的に慣れていない僕にとってはそれが精一杯だった。
霧野「……で、紅音が俺に聞きたいことはなんなんだ?……告白の断り方?付き合い方?まあ、付き合い方は正直あまり教えたくないけどな。」
紅音「う……」
まくし立てるように言われて僕は固まった。
僕はどうしたいんだろう。
あの女の子のことは嫌いじゃない。
でも、特別好きなわけでもない。
でも、もし告白を断ったらあの子は傷ついて……
でも、半端な気持ちで付き合うのはいいことではなくて……
紅音「わからない……です」
黙っていた僕をずっと見つめていた霧野先輩。
先輩は僕の言葉を聞くと、ため息をついた。
それはとても深い深いため息だった。
紅音「ごめんなさい……」
霧野「いや、違うんだ。……こうして紅音俺を頼ってくれるのはスゴく嬉しいからな」
霧野先輩は笑った。
霧野「まあ、消去法で俺の所に相談に来てくれたのかもしれないけど、俺に相談したのも間違いだったかもな」
紅音「えっ……?」
霧野先輩はぐっと背伸びをする。
霧野「なんていうか、さ。本当は応援してやりたいし、最終的には紅音次第だ……とか、先輩らしいことを言ってやりたいんだけど」
霧野「ごめん。紅音にはその子と付き合ってほしくない。」
予鈴が学校に鳴り響いた。
午後の授業開始まであと5分だ。
……つまり、僕と霧野先輩は教室に戻らなくてはいけない。
霧野「……戻るか」
紅音「あ……はい……」
僕が歩き出すと、先輩が腕を掴んだ。
振り向くと、そこには先輩の辛そうな顔があった。
紅音「霧野……先輩…?」
霧野「……やっぱりさっき言ったことは忘れてくれ。まともな相談相手になれなくてごめんな」