イナゴ 夢小説

□嫉妬
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 遊園地に行った翌日の月曜日。
僕は朝練の時間に合わせて学校へ向かう。


紅音「もうちょっと早く出ればよかったかなあ……」

僕は呟いた。

 マネージャーはみんな、選手より早く来るようにしているのだが、神童先輩はそれよりも早く来ているのだ。


紅音「でも、早くいっても僕に出来ることなんてほとんどないし、かえって邪魔に……」


 そんなことを考えていたとき。
僕の背中が誰かに叩かれる。

霧野「おはよう。」


紅音「あ!霧野先輩、おはようございます!!」

 僕の背中を叩いたのは霧野先輩だった。
選手たちの登校してくる時間にはまだ早い。



紅音「先輩、ずいぶん早いですね」
霧野「ああ、たまには早く行ってみようと思ってさ」

 霧野先輩は僕の隣を歩く。

考えて見れば先輩と二人だけになるのは初めてだ。

僕は緊張を紛らわすために話題を探す。



紅音「そういえば、昨日は楽しかったですね!……あんまり霧野先輩とは一緒にいれませんでしたけど……」

霧野「そうだな……俺はずっと狩屋と一緒だったし……」
霧野先輩は昨日のことを思い出しているようだった。




霧野「そういえば紅音と神童は何をしてたんだ?」


紅音「あ、僕たちは……ミニゲームしたり、観覧車へ乗ったり……」
僕は特に印象深かったことを思い出す。

霧野「へぇ……観覧車か……」
 霧野先輩は言葉を噛み締めるようにいった。

そして、何かを考え込んでいるようにみえた。


紅音「………霧野先輩、どうかしましたか?」
僕は呼び掛ける。



霧野「………いや、こういうのでも嫉妬するもんなんだなーって」

 霧野先輩は腕を組んでいた。

 確かに、友達同士でも嫉妬はする。
僕も小学生のときはよく、仲の良い友達が自分以外の子と遊んでいると嫌な気分になったものだ。



 僕はいつか天馬くんから聞いた、神童先輩と霧野先輩は昔からの親友だと言う話を思い出した。



紅音「安心してください、霧野先輩!神童先輩の親友は霧野先輩ですから!」

 そして僕と神童先輩は友達ではなく、ただの先輩と後輩。
いや、ただのスター選手とそのファンでしかないのだ。


だから、霧野先輩は嫉妬する必要なんてないのに。


霧野「いや、そうじゃないんだけどさ……」


霧野先輩はため息をついて、足を早めた。


僕は霧野先輩を追うように小走りする。
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