イナゴ 夢小説

□憧れの雷門中サッカー部!
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 僕が雷門中に転校してきたのは、つい最近の事だった。
親や親戚の都合で雷門中に強制的に入学させられた僕だったが、僕はむしろ嬉しかった。

 だって、憧れの「雷門中サッカー部」の選手たちに会えるのだから!

 僕は運動能力が人並なので、サッカー部に入ることはできない。
でも、いつもテレビで見ている雷門の選手に会えると思うと、胸が高鳴った。


紅音「いってきます!!」
空っぽの部屋にそう言って、僕は走って家をでた。




 張り切って家をでたのはよかったが、どうやら僕は張り切りすぎたらしい。
予鈴が鳴るよりずっと早く雷門中についてしまいそうだった。

せっかくなら学校見学でもしようかな?

そんなことを考えていた時だった。

 前を歩いていた雷門中の男子生徒がゆらゆらと車道に歩いていく。
今にも倒れそうだ……

僕は歩く速度を速めた。
どこかでみたことのある後姿。
ブラウングレーのふわふわとした髪が肩で揺れていた。
わかった、あの人はもしかして……

次の瞬間。
紅音「危ない!!」
僕は叫んだ。
 朝の静かな道路に車のクラクションが鳴った。
僕は走って、その男子生徒に手を伸ばし、思い切り歩道に引き、抱きとめる。
僕たちは歩道に倒れこんだ。

紅音「いたたた…」
僕は後頭部をさする。
そして、僕の上に倒れこんだ彼の肩を叩く。
紅音「あの、だ、大丈夫ですか?」
?「ご、ごめん!」
彼は顔をあげて、急いで立ち上がった。
「俺の不注意で……ケガはないか?」
そういって手を差し出すその人はやはり雷門中サッカー部キャプテン、神童拓人だった。

紅音「あ、はい。僕は大丈夫です。その…あなたは?」
神童「俺は大丈夫だけど…」
紅音「そうですか!それなら、良かったです!」
僕はにっこり笑った。
本当に良かった、神童先輩がケガをしたら大変だ。

僕は神童先輩の手につかまって、体を起こした。
神童先輩の顔が近くなった。

神童「本当に、ごめん。ちゃんとしたお詫びとお礼は今度させてもらうから……。あ、頭打ったなら一応救急車を呼んだ方が…」
紅音「いや、本当に大丈夫ですから!」
神童「そ、そうか……?」
僕は神童先輩の目をみた。

その目は、少し赤く腫れているような気がした。
神童先輩はそれを隠すかのように目をそらす。
そして、うつむきながら歩きだした。

僕も、その数歩後ろ歩く。


 しばらくして、気まずい沈黙を破ったのは神童先輩だった。
神童「随分朝早いんだな」
紅音「え、あ……今日はたまたま早く来ちゃったんです!天気もいいですし」
僕は歩みを少し早めて、神童先輩の隣に並んだ。
紅音「先輩も朝早いですね!朝練ですか?」
神童「ああ。そんなところだ。練習メニューの確認と、グランドの確認、備品チェック。マネージャーに任せきりのボール磨きもやりたいんだ。」
紅音「あ、朝からハードですね……」
どうりでこんなに朝早いはずだ。
周りを見ても、朝練に向かう生徒はいなかった。


キャプテンって、大変なんだな……

紅音「あ、あのっ……!」
僕は気づいたら声を発していた。
神童先輩は僕の想像以上の大声に驚いたようだった。
紅音「あの、僕にも手伝わせてもらえませんかっ!」
神童先輩が更に目を丸くした。

……な、なにを言っているんだ、僕は!
何をでしゃばってるんだ、僕は!


紅音「え、えっと…あの…」
僕はあわてる。
確かに神童先輩の手伝いをしたいのは事実。
でも、僕の手伝いなんて迷惑だろうか……


紅音「そ、その!ボール磨きなら、できますから!やらせてもらえませんか!」

 考えるより先に、勝手に口が動いた。

 手伝いたい。
神童先輩の負担を、少しでも軽くしてあげたい。
僕がそう思ったのは、先輩の腫れた目が、どこかで引っかかっていたからだろうか。

紅音「あの…すみません……」


 僕が言うと、神童先輩はびっくりした顔から、柔らかい笑顔になった。





神童「……ありがとう。じゃあ、頼んでもいいか?」


紅音「はっ、はい!!」


僕の返事に、神童先輩は目を細めた。
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