ショコラ
□第9話
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キッチンからユリウスの作業場へ料理が運び込まれ、美味しそうな香りが広がっていく。
しかし、ショコラの前におかれているのはエース特製のスープではなく、ジェリコの持ってきた桃だけだった。
「ウサギ相手にウサギ肉のスープはまずいだろう…。」
エース特製スープは当初、普通の野菜スープになる予定だった。しかし、彼は、ショコラがお腹を空かせていると分かり、お腹に溜まりそうなものを投入することにした。
あくまで相手に栄養をとってもらおうと思っての事だった。が、相手はウサギ。スープの中身もウサギ。
「エース…ごめんね…。」
流石にエースとて自分と同種族の肉が入ったスープは食べたくはないし、見たくもない。彼女の反応は当然だった。
「ショコラ、薬を飲まないといけないから、桃を食べておけ。」
「う…うーん。…えっと…桃だけでいいです…。」
ひと口サイズに切りそろえられた桃を口に運ぶ彼女は、薬の袋から目をそらしている。
甘いものを好む彼女は苦いものが苦手らしい。しかし、熱が下がりきっていないのだから、薬は飲ませなければいけない。
「…ちゃんと薬を飲んだら、温かいココアを淹れてやる。」
「えー……。」
普段は聞き分けの良い彼女だが、どうやら薬は本当に苦手らしく、なかなか返事をしない。
「薬を飲まないと良くならないぞ?外出できなくてもいいのか?」
「も、もう元気よ…?」
ジェリコの言葉を聞いてもショコラは首を縦に振ろうとしない。
それどころか、耳が後ろ側に寄り、脚はパタパタと抗議している。
ショコラの癖…嫌なことや、不満があるとき、口では言わないぶん無意識に行動にでてしまうのだ。
「紅茶は飲めるだろう。苦味は対して変わらない。」
「紅茶とお薬は別だもん…。」
完全なる屁理屈だ。というかだんだん返答に困ってきているというのが実のところだろう。
「(無理やり飲ませるしかないか…?)」
ユリウスが半ば強制的に飲ませようかと思ったとき、予想外の人物が声をあげた。
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