ショコラ
□第4話
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帽子屋だけど帽子は作らない。
マフィアはマフィンっぽいけどお菓子じゃない。
墓守領へ帰り、ユリウスに聞いてみた。
「ねぇ、ユリウス。マフィアってなぁに?」
時計の修理に明け暮れていた彼の手からガチャンと時計が落ちた。
「お前…今までどこに行ってきたんだ?!」
「え、帽子屋屋敷よ。お茶をご馳走になったの。あと、ブラッドさんがお客さん第一号になってくれたわ。」
がっくりと項垂れるユリウス。私はまた何かしてしまったのだろうか?
「あぅ…ユリウス…?」
「ああ、違う。怒ってるんじゃない。城の方しか気にかけていなかった自分に辟易しているだけだ。」
それからユリウスは私に色々と世界事情を教えてくれた。
「マフィアというのはお菓子じゃない…。そうだな…少し危ない商売や、戦いが仕事…とでも言っておくべきか。」
「危ないの?」
「ああ、危ないんだ。付き合いを持つなとは言わないが、彼らが仕事をしているときはついていくなよ?」
ユリウスとの約束事が増えました。
『マフィアのお仕事にはついていかないこと』
それから何回か時間帯が変わった頃、ジェリコに頼みごとをされた。
「エースを連れ戻してきてほしい。」
「ぅ…ジェリコは一緒に行ってくれないの…?」
今までエースの捜索にはユリウスとジェリコも出ていたはず。
「もうすぐ測量会が始まるからな。色々と準備で手が離せなかったんだ。お願いできないか?」
いつも良くしてもらっているジェリコにそう言われたら断れる訳がない。
「わかった、見つけて連れて帰るわ。ジェリコはお仕事がんばって!」
「ああ、ありがとう。よろしく頼む。」
美術館をでてため息をつく。
耳を澄ませばすぐにエースの居場所は分かる。
しかし、彼が私の言うことを聞いて一緒に帰ってくれるだろうか。
「今度こそ食糧にされちゃうかも……。」
墓守領に居座ってからずっとユリウスに甘えきっている私を彼は嫌っている。
「と、とりあえずちょっとだけ近づいてみよう…。」
ショコラは彼が居るであろう森の中へと足を進めた。
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