旧作部屋@
□嫌い嫌い大嫌いイコール好き
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扉の向こうで息を飲む音が聞こえた。そりゃそうだ、名字で呼んだことなんて一回もないんだから。
ていうか、なに?私怒ってるの?
「…ごめん、なさ……」
ああ、泣いてしまった。好きな子を泣かせるなんて最低の行為なのに、身体はぴくりとも動かない。
「…お前なんて嫌いだ」
心と正反対の言葉が勝手に私の口からこぼれ出していく。
「やだ…そんな、こと…言わないで……」
「誰のせいだと思ってるんだ。私はずっとお前が好きなのに、ずっと好きだと伝えてきたのに、嫌いって言ったのはお前だろう!?」
とうとう怒鳴ってしまった。こんなに感情が高ぶることは一度もなかったのに。
「……ごめんなさい、太子…嫌いって言って、ごめんなさい…」
きっと妹子の顔は涙でぐしゃぐしゃになっているだろう。本当は今すぐ拭ってあげたいけど、扉を開ける勇気が出ない。
「………好き…です……」
「―――え」
「好きなんです…どうしても、素直になれなくて、……嫌いってひどい言葉を…本当は、ずっと嬉しかった……太子、お願いです。もう嫌いなんて言いませんから、好きって言ってください…」
やっと聞けた、愛の言葉。私は固く閉ざされていた扉を開き、泣きじゃくる妹子を強く抱きしめた。
「ごめんね、妹子。好き。あんなこと言ってごめんな、傷つけてごめん…」
許してもらえないかもしれないけど、必死に謝った。いくら怒っていたとはいえ傷つけてしまったことが悲しかった。
「…嫌いって言って、ごめんな……」
「僕も、ごめんなさい…」
*
「ねー、妹子ー。私のこと好きー?」
「………」
「無視すんなよ」
「もうぅ…何回言わせる気なんですか。しつこいですよ」
「一日5回は言ってもらいたい!」
「そんなに言えるか!」
「なんだようケチ〜。言ってよ」
「…言わなくたって分かるでしょう」
「妹子の口から聞きたい」
「あ、うー……す、すき、です…」
「うん、私も好き!」
→あとがき