旧作部屋@

□心がね、あったかいの
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思い返せば、私はずっと一人だった。


誰も私自身を見てくれない。ヒトは皆私に媚びへつらい、卑しい笑みを浮かべて近寄ってくる。私はそれが心底嫌いだ。


分からなければ楽なのだろうが、不幸なことに透けて見えてしまうからタチが悪い。


いつしか私は自ら心を閉ざし誰も私の心に入り込めないようにした。ただ一つ、ヒトならざる者を除いて。


でも、妹子と出会って、妹子に恋をして、私の人生は変わった。

*

妹子は抱きしめると素直になって甘えてくる。時々眠ってしまうから、私の腕の中はどんな場所より落ち着けるらしい。預けられる重みが愛しい。


「ね、妹子。私に抱きしめられるの好き?」


私の肩に顔を埋めていた妹子が私を見上げ目をぱちくりさせて、それからにこっと微笑んだ。


「はい。太子の腕の中はあったかくて心地良いです」


「そっか、嬉しいなぁ。私も妹子にぎゅってされるのも、ぎゅってするのも好きだよ。妹子を抱きしめるとね、心がぽかぽかしてあったかくなるんだ」


今だってまるで日だまりの中にいるみたいにあたたかい。この感覚はなんと呼ぶのだろう。


「妹子を好きになってよかった。ありがとう」


「それはこっちのセリフですよ、太子」


妹子がくすりと笑うと自然に腕に力がこもった。もっとそばに、もっと近くに抱き寄せて。隙間がなくなるくらいぴったりと身体を合わせる。


「太子」


「なーに?」


「……好きです」


思いがけない言葉に胸がきゅうっと鳴った。素直な気持ちは私の心に効果抜群。


「うん、私も好きだよー」


ああ、大好きな人がそばにいるってなんて幸せなんだろう。抱きしめるだけでこんなに心が満たされていくのは何故なんだろう?


好きと伝えるたびに気持ちがどんどん増えて溢れ出して、また伝えずにはいられなくて。


私の心をあっためてくれてありがとな、妹子。お前の心もいっぱいあっためてあげるね。


→あとがき
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