旧作部屋@
□嫌い嫌い大嫌いイコール好き
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「いーもこっ、好きだぞっ!」
「そうですか。僕は嫌いです」
一体このやり取りを何度繰り返したことだろう。返ってくるのはいつも冷たい「嫌い」の一言。
でもな、私は分かっているんだ。妹子の嫌いは好きの裏返しだってこと。
「つれないなー、こんなに妹子のこと好きなのに」
「バカなこと言ってないで仕事してください」
必要以上に素っ気ない態度は照れてる証拠。ほら、耳が赤くなってる。
そっぽを向いてるのは真っ赤な顔を見られたくないからなんでしょ?私は全部知ってるんだよ。
なのになんでそういうことばかり言うの?
「うっとうしいんで早く執務室に戻ってください。僕に構っている暇なんてないはずです」
またそんなこと言う。
「なぁ、妹子」
「まだ何かあるんですか」
「好きだ」
今度は真剣な顔で言ってみた。さてどうなるだろう。
「…何度も言わせないでください。僕はアンタが嫌いなんです」
これで何回目なんだろう、何回「好き」と言えば妹子は同じ言葉を返してくれるのかな。
正直もう疲れてきた。
「……分かったよ」
私は立ち上がって妹子の方を一切見ずに部屋を後にした。
「妹子のバカ…」
すっかりふて腐れた私は執務室にこもり、妹子を意図的に避けるようになった。
極力外には出ず一日をまともに仕事して過ごす日々が五日程続いた。
そして六日目、私は我慢の限界に達していた。
自分から避けたにも関わらず、妹子に会いたくて仕方なかった。我ながら情けない。
やっぱり会いに行こうかなぁ。ちょっとだけでも顔が見れたらそれでいいから…。でも今さら顔合わせづらいよ。
どうしよう…。
コン、コン。控えめなノックが響いた。
「誰だ」
「…あの、僕です」
聞きたかった声、だけど心は裏腹に凍りついたまま。
「何しに来た」
なんで私昔に戻ったみたいな口調になってるの?これじゃ妹子が怖がっちゃうじゃないか。
「っ、それ、は…」
「用がないなら帰れ。私は貴様のように暇な立場ではない」
「太子…」
声だけでも怯えているのが分かる。これ以上言っては駄目だと頭の中で警鐘が鳴っているのに、口が止まらない。
「いつまでそこにいるつもりだ、小野」
「……っ!?」