旧作部屋@

□あなたへ。
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僕には大切な人がいる。


上下青ジャージの聖徳太子。


聖人だなんだと崇められているけど、実際は仕事をしないうえに、年の割りにえらく子供っぽい人だ。


なんでこんな人が倭国の摂政で皇子なんだろう。ありえない、の一言に尽きる。口が裂けても言えやしないが、太子に憧れて役人になったのがバカみたいじゃないか。


バカで、人望なくて、僕を散々振り回して、本気でウザイ。だけど僕は不思議なことに、太子のことを嫌いにはなれなかった。


犬みたいに尻尾振ってなついてくる人を無下にはできないし、なにより自分の性格のせいかつい甘やかしてしまう。


そうしたら太子はおひさまみたいに眩しい笑顔を向けてくるものだから、相当心臓に悪い。あの笑顔は本当に反則だと思う。


一緒にいるのが当たり前になってきた頃、僕は太子に恋をした。


あんなバカを好きだなんてありえないって思ったけど、僕の心は紛れもなく「好き」を示していた。


すれ違ったり、ケンカしたり色々あったけど僕たちはどうにか恋人同士に収まった。


素直になれなくてひどいことを言ってしまう時もあるけど、太子はこんな可愛くない僕を好きだと言ってくれる。


ひょろいくせに結構力は強くて、抱きしめられるとすごく安心する。手はいつも冷たいのに身体はあったかくて、心臓の音を聞きながら眠りにつくのが僕の幸せ。


僕は太子の手が好きだ。いつも壊れ物を扱うみたいにそっと触れてくれる優しい大きな手。


指先から伝わるぬくもりが心を満たした時、僕はようやく素直になれる。


そうなると、太子は低くて耳によく響く優しい声で僕の名前を呼び、甘くてふわふわした愛の言葉を紡ぐ。


名前を呼ばれるだけで胸がきゅうっとなるなんて、知らなかった。愛しい人が隣にいるだけで、泣き出しそうなほど幸せだなんて。


あのですね、太子。


太子はいつも僕に好きって言ってくれますけど、僕だって負けないくらい貴方が好きなんですよ。そこんとこ、ちゃんと分かってます?


太子、僕はどれくらい「好き」を返せていますか?ちゃんと伝わっていますか?


僕ばっかり「好き」をもらうなんて不公平ですからね。


好きです、太子。この世の誰よりも貴方が大好きです。


明日も、明後日も、次の年も、貴方と一緒にいられますように。


ずっと、貴方のそばに。


→あとがき
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