旧作部屋@

□頑張り屋の君だけど
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か細い、よく耳を澄ませていないと聞こえないような小さな声。それが確かに聞こえて、私の目から勝手に涙がぼろぼろこぼれ落ちる。


「う、いもこぉ、うー…」


「泣いてるんですか、太子…?」


「るさい、妹子の、せいだっ」


「僕の?」


「倒れてたんだよ、お前。そんで、私、妹子が心配で…全然、目開けないから」


倒れた妹子を見た瞬間、心臓が凍りつきそうだった。声が聞こえるまで怖くて怖くて仕方なかった。妹子を失ってしまいそうで、たまらなく怖かった。


「…ごめんなさい」


しおらしい声。本当に申し訳なさそうな、全然妹子らしくない声。私が聞きたいのはそんな声じゃない。


「ほんとに、ほんとにっ、心配したんだぞアホ妹子!だいたいなぁ、お前は頑張りすぎなんだよ!そりゃ仕事は大切だ、大変なのも分かってる、でもこんなになるまで頑張れとは言ってないだろ!」


怒りと悲しみがごちゃごちゃになって訳分からない。ついでに涙も止まらない。


「…頼むから、二度と無理しないで。私はもう、こんな思いするの嫌だよ……」


ぐしぐしと乱暴に涙を拭って妹子の手を強く握りしめる。祈るように、懇願するように。


私はもう、この子がいないと駄目なんだ。


妹子は黙って私の手を握り返した。弱々しいその行為はきっと「分かりました」と伝えたかったのだろう。


こんな時でも、やっぱり妹子は優しかった。


→あとがき
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