小説:ミンス完全妄想編
□患者と医者【JJ】
2ページ/20ページ
返事を急かすように肩ごと頭をゆさゆさ揺すられて、舌を噛まないように気をつけながら苦笑いで彼にこたえた。
「別に、特に男同士だと変ってことないんじゃない?クリスマスにフレンチとかだとさすがに浮くけど。行きたいとこ訊いてみればいいじゃん」
「任せるって言われたんだよ。いちばん行きたいのは動物園だって」
「…動物園か」
男ふたりで。
うん、まぁ、あんまり見ないかな。
しかも喘息持ちの患者さんだしねぇ。
だからこそ行ってみたいんだろうけど、彼は。
「確かにふたりだと違和感あるかもねー。チャンミンさんたち誘って四人で行けば?医者がふたりもいれば多少発作が起きても大丈夫でしょ」
「おー!なるほどそうか、人数が多ければいいのか。楽しそうだね、ピクニック気分でさ。日にちが合えば!電話してみよ!あ」
パソコンと並べてテーブルの上に置いてある携帯を取りに行こうと勢いよく身を翻したかと思えば、ピタッととまってグルンとおれを振り返る。
まったく、忙しないな。
気持ちが落ちついてないのが目に見えるよう。
そんなにデートがうれしいか。
単純な奴。
「ジェジュンはいつが空いてる?来月」
毎週逢ってるくせに初々しいこと。
てか来月ってまだ真冬じゃん、動物園なんて…
………ん?おれ?
「は?服でも買いに行きたいの?」
「じゃなくて。いっしょに行こうよ、折角だしさ。動物園なんてなかなか行く機会ないだろ?」
散歩中の犬みたいにキラキラの瞳で、彼は満面に笑みを湛えてみせた。
「…二組のカップルと?」
ズレてる。
それはすごくズレてるよ、ユノ。
男五人で動物園に行くのはまぁいいとしても。
おれ、その場で何してればいいのさ?
「ふたりとも話しやすいから大丈夫だよ!おまえも人見知りするほうじゃないじゃん?チャンミンに訊いてみよう、いつが空いてるか」
ルンルンと歌うようにダイニングへ戻っていくその後ろ姿を、辟易とともに見守った。
人見知りとかそういう問題じゃないんだけどね。
フツーそういう思考になるかな、ユノくん?
いくら天然ですっとぼけで空気読めないからってさぁ…
まぁ、しょうがないか。
彼にしてみれば、これは謂わば癖みたいなものなんだろう。