小説:ミンス完全妄想編
□患者と医者【転】
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ていうか、同い年なんだ。
いいようにあしらわれてたからてっきりパクさんのほうが歳上なんだと思ってた。
子どもっぽいよな、あの人…
「ジュンスくんがいてくれたことでだいぶ救われてきた、って言ってた。家族と離れてる時間の、寂しかった心を埋めてくれたって。なんかいいよなぁ、そういうのって。親友ってそういうものだよな」
ぼくは曖昧に頷いてみせた。
正直に言えば、親友がどういうものかなんてぼくにはよくわからない。
自分の人生を振り返っても、親友と呼べる存在はぱっと思い浮かべることができない。
誰にも頼らず、弱音を吐かずに過ごしてきたこれまでの隙のない時間のなかで、誰か他人が自分にとって特別な人になるという感覚を知らずに生きてきた。
たぶん、ぼくもまた、誰かにとっての特別にはなれていないんだろう。
これまではそんなこと気にも留めていなかったのに。
どうして、あの天使みたいな笑顔が頭に浮かぶんだろう?
「先輩、今日予定なかったですか?今週は出張もあったし忙しかったので、疲れてるんじゃないですか」
「ううん、充実した一週間だったしすごい元気だよ。チャンミンのお陰で仕事もだいぶ楽させてもらってるしな。今日は、ホントはパクさんの様子も見れたらと思ってきたんだけど」
逢えなくて残念、と笑う彼の、他人を気遣うそのさりげなさ、そして誰のことも大切にできる優しさを、見倣っていきたいと思った。
最初に逢ったときから、先輩はいつも強くて暖かい人だったけどなぁ。
他人を受け容れるちからがある人。
今日までは、自分とはまったく違う人種だからと割り切って、憧れるだけにとどまっていた、彼への尊敬の念。
今感じているのは、羨望なのだろうか?
この人のように他人を受け容れられるようになりたいと願う、この気持ちは。
「最近通院してなくてね。勿論、彼にはいいことなんだけど、ちょっと心配なんだ。悩みを溜め込む癖があるから」
「随分気にかけてるんですね」
「んー?そうだね、他の患者さんとは違う扱いをしてると自分でも自覚してるんだけど。なんでだろうなぁ、歳が近いっていうのもあるし、開院当初から通ってくれてるっていうのもあるし…なぁんか、気になっちゃうんだよなぁ。そういう人っていない?」
食べ終わったゴミを片づけるぼくにお礼を言いながら、彼は照れたように笑った。
ぼくの心臓はなぜか無駄に脈打っている。