小説:ジュンス片想い編
□The way you are
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ユチョンはぼくの目を見て、ぼくがよくわかってないことを感じ取ったのか、あきらめたように優しく笑った。
「ジュンスはどう?その人のすべてをすきでいられると思う?」
「えー?そんなのわかんないよ。すべてなんて見たことないもん」
その言葉にぶはっと吹き出して、大声で笑うユチョン。
別になんにもおもしろいコト言ってないのに…ユチョンってホントよく笑うよなぁ。
「だよねぇ〜、そりゃそうだよねぇ。あは、あはは!ジュンスぅ、最高〜」
「なんだよぉ、何がそんなに可笑しいの?」
「だってさぁ〜ジュンスさぁ〜」
笑いすぎて乱れた息を整えた後も、ユチョンはニマニマ笑いを抑えられないようだった。
そのニタニタした瞳でぼくを見て、またうれしそうにふふっと笑う。
「おれに隠してるつもりなんじゃなかったの?すきな人がいるコト」
………ん?
何を言われたのかわからず、暫くぼくはユチョンのいけすかない笑顔とみつめ合っていた。
隠してるつもり?すきな人がいるコトを?ユチョンに…すきな人が…ぼくが、ユチョンに…
ああ!あ?あ〜〜〜?!
「いやっいやいや!それはさぁ、なんていうかさぁ、いっ、一般論?ていうか、なんていうか、そういうモンじゃないのかな〜って」
ユチョンはとても楽しそうに笑っている。
ぼくはそれどころではなかった。頭がとんでもなく混乱して、有り得ないくらいにグルングルンして、考えがまったくまとまらない。
いつから?!なんで?!何を…どこまで?!
どうしよう、どうしよう、どうしよう、どうしよう?!
くっくっと体を震わせて笑うユチョンから目を逸らし、とりあえず落ちつこうと長い息を吐いた。
「ぜんぶを知りたいと思う、ジュンス?」
ぼくをさらに混乱させようと企むユチョン。顔が熱くなってくるのがわかる。
「知らないよぉ!言ったじゃん、ぼくの話じゃなくって一般論だからっ」
「じゃあ一般論でいいから。ほらほら」
「なっ、う、う〜ん…そうだね、一般論で言えばそりゃあ、ぜんぶ知りたいんじゃない?」
ふむふむ、とユチョンはぼくの脚の上で頭を上下させる。
「悪い癖とか、いやな性格とかも?自分とは違う価値観とか、ちょっと歪んだ考えかたとか、昔の恋とか、自分とはかけ離れた未来図とかでも?」
ユチョンは冷めた口調で続ける。
だけどなんだかやたら現実味のある言葉。ぼくは彼がホントは後悔してるとわかっていた。
いつだって完璧でいなくたっていいのにね。ユチョンはいつもそういようとして苦しんでるような気がする。
「うん…それでもやっぱり、知りたいかなぁ。いいことも悪いことも、その人についていちばん多くのことを知ってる人間でいたいし…知らなきゃ合わせることも直してあげることもできないじゃん」
ぼくが視線を戻すと、ユチョンは寂しそうな瞳でぼくをみつめ返してきた。
「その人も、ジュンスのすべてを受けとめてくれるといいね」
「うん…えっ?!や、だから、それは…」
なんか最近こんなの多いなぁ。こないだもチャンミンに…
ぼくのことなんて放っておいてくれればいいのに。誰がなんと言おうと、この恋が成就しないことは自分がいちばんわかってる。
無理なんだよ、チャンミン。きみには一生わからないと思うけど。
「早く言わないと置いてかれちゃうよ?」
「はっ?何に?」
「チャンミン」
心臓が一回バックンと打って、それからとまった。…感じがした。
バレてる?ユチョンはぜんぶわかってるの?なんでわかったんだろう?それでも変わらずに接してくれるの?
ユチョンはふふっと綺麗に笑って、うつ伏せのままソファの上で足をバタバタ動かした。
「アイツさぁ、最近きてるよね。オトナになってきたよね、顔が」
…え。なんの話、コレ?ぼくまたからかわれてる?ユチョンに化かされてる?
「そうだね…老けてきたっていうか」
「あは!老けてきたは可哀想だろ〜。女できたんじゃないかな、あれは」
…は?なんだって?
「女ができた?」
「もージュンスぅ。だからぁ、エッチしちゃったんじゃないかな〜って言ったの」
ああ、チャンミンに女がね。なるほどなるほど…
………えっ?
…ええ?!チャンミンがなんだって?!
「なっな、何言って…そんな、えっ、えっ…エッ………」
顔が熱い。胸が痛い。
チャンミンが…最近急におとなっぽくなってきたとは思ってたけど、そんな…
そんなこと、思ってもみなかった。