小説:ジュンス片想い編
□明日はくるから
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「ねぇ、ジェジュン。これ、可愛くない?」
ユノが雑誌の右下を指差してジェジュンに話しかける。
やっぱり喧嘩じゃなさそうだなぁ。ぼくは手を休め、そっとふたりの様子を窺った。
満を持しての一言に、ジェジュンはゆっくりイヤフォンを外してユノの指先を見る。
「ホントだね…ほしいの、ユノ?」
ぼくのほうからはそれが何か見えないが、ジェジュンのちょっと素っ気ない訊きかたが気になった。
ユノのことですから、またとんでもなく趣味の悪いものでも選んだんでしょうかね。
ぼくはオシャレ云々に詳しいほうじゃありませんけど、それでも時々ユノのセンスには度肝を抜かれますから…
「え〜、おれよりジェジュンに似合いそうじゃん?」
「そんなことない、ユノ似合うよ」
端から見れば褒め合いのようなやりとりも、なんだか他人行儀に聞こえる。
ぼくには関係ない。そう思って参考書に目を戻してみても、完全に意識はふたりの会話に向いていた。
「そっかぁ?ジェジュンだったらどっちの色?」
「おれはこっち。でもユノはこっちのほうが似合うね、きっと」
ふつうに会話してらっしゃる…ような気もする。ぼくの考えすぎだったのかもしれない。だけど…
ぼくはまた顔をあげて、ふたりを見た。
忙しなくジェジュンと雑誌の両方に視線を動かしてるユノに対して、ジェジュンはまったく顔をあげずにしゃべっている。
「あ、これこないだテレビで観たやつだ。女の子にすごい人気なんだってね〜」
とにかく一生懸命話題を振るユノ。ジェジュンの態度にめげない心の強さがなんだか逆に痛々しい。
「…そうなんだ」
「ジェジュンこれ知らない?なんかさ、買った子が言うには、毎日これを…」
「どうでもいいよ」
うっ…なんたる不意討ち。
冷たく放たれた一言で、またリビングは静まり返る。
最高潮に重くなった空気に堪えられず、ぼくは見ていないふりをした。
「あ…ごめん」
ユノの情けないほど萎んだ声。そして沈黙。
こんななかで勉強しろって言うんですか?お父さん、今日ばっかりは許してください。とてもじゃないけど数式が頭に入ってくる気がしません。