小説:ジュンス片想い編
□Somebody to love
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そんなくだらないことを考えてるうちに、飛行機は無事着陸した。寝起きのジュンスをユチョンが支え、ジェジュンとユノは飛行機のなかでしてた話を延々と続けながら、ぼくたちは迎えにきてくれたマネージャーさんの車で日本で借りているマンションへ向かう。
着いた頃には、もう夜だった。6月の陰鬱な雲が日本を包んでいるらしく、足下にはいくつもの水溜まりができている。おそらくつい先程まで降っていたと思われる雨は、ぼくらの到着とともにやんだようだ。
「晩ご飯、どうする?」
エレベーターのなかで徐にユノが言う。
ぼくたちは一斉に顔を見合わせた。
「食べに行く?」
飛行機のなかで仮眠を取り、元気いっぱいのジュンス。(どうやら首へのダメージはないみたい)
となりでユチョンが渋い顔をする。
「え〜、今から?疲れちゃったよ。なんか買ってこよう?」
「じゃ、ぼく材料買ってきてつくるよ。チゲだったらすぐできるしね。待ってて、すぐ行ってくる」
そう言ってジェジュンはエレベーターを降りたぼくたちに手を振る。
扉が閉まるその一瞬前に、ぼくはジェジュンを乗せて再び下りようとしているエレベーターのなかへ駆け戻った。
閉まる扉のほうを振り返ると、驚いたジュンスのまるい瞳と目が合う。ぼくと目が合ったことにジュンスが気づいたかどうか確かめる間もなく扉は閉まった。
「何、どうしたのチャンミン?」
下がっていくエレベーターのなかでジェジュンが訊く。たぶんぼくが車のなかに忘れものでもしたんじゃないかと思ってることだろう。残った三人もそう思ったかもしれない。いや、ユチョンはなんとなくわかってるかな…いつだって人の考えを見透かすような洞察力を持ってる人だから。
でも違う。ただぼくは、ジェジュンひとりを買い物に行かせるのは末っ子としてダメだろうと思ったのだ。
「ぼくも行きますよ」
そう言うとジェジュンは、すこし眉を上げて意外そうな顔をしてみせてから、いつものように穏やかに笑う。
「ありがと、チャンミン。疲れてない?大丈夫?」
自然な気遣い。優しい言葉。ヒョンたちに教わることはステージの上のことだけではない。とてもぼくよりひとつやふたつ歳上なだけとは思えないほど素晴らしい特質を、四人のヒョンそれぞれが持っているのだから。
「はい、ぼくは余裕です。ヒョンは?」
「おれも全然元気。ユチョンはまだまだ体弱いもんね、精力つくもの食べさせてあげなくちゃな」
面倒見のいいジェジュンはメンバーのために、自分が疲れてるときでも炊事をしてくれる。ぼくは料理が全然できなくていつも手伝えないけど、いつかちゃんと教わってジェジュンの負担を減らせたらいいな。
スーパーはぼくたちの住むマンションからすぐ近くにあるので、歩いていける。芸能人とはいえ日本ではまだ成り立てで知名度もないため、別に変装する必要もない。
それはすごく楽なんだけど、やっぱりこの世界でやっていく以上寂しいことでもある。外に出るのがうんざりするくらい有名になることが、ある意味ではぼくたちの夢なのだ。
「なんか生暖かいですね、日本は」
肌が湿るちょっと不快な感覚にぼくは眉を顰める。
「ベタベタするね。汗はもっとさらっと気持ちよくかきたいよ」
「真夏になればまた違うでしょうけどね。湿気があると暑さも増す気がします」
そんなどうでもいいような話をしながらスーパーに入り、ささっと買い物をして(多少余計なものまで買ったりしながら)、15分くらいでスーパーを後にする。