小説:Bigeastation編1~30
□1:Bigeastation 1.
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Bigeastation 1. 2007/4/1~7
「ホント緊張しましたよ」
宿舎に帰ってくるやいなや、チャンミンは深く息を吐いて、ソファに座り込んだ。
「お疲れお疲れ〜。何か飲む、チャンミン?」
「冷たいものください」
ジェジュンに労いの言葉をかけられ、ユノにポンポンと肩を叩かれながら笑う彼を、ぼくはすこし遠くから見ていた。
「カッコよかったよ、チャンミン」
ユノの優しい言葉に、頬を緩ませる。
「ありがとうございます。でも結構噛みましたし、難しかったですねー…次はもっとスムーズに読みたいです」
ラジオのまわしというやつがどれほどシンドイか、チャンミンのくたびれ具合が如実に表していた。
はじめてのレギュラーラジオ。しかも日本語での。
そりゃあぼくたちもみんな緊張したし、大変だったけど、それをまとめなきゃいけないチャンミンの気苦労たるや相当のものだっただろう。
いやぁ、カッコよかったな。惚れなおしてしまった。
「でも、みんなうまく喋れたし。なぁ?」
「ユチョンはあんまり喋らなかったよねぇ?」
ユノの言葉にこたえてぼくが言うと、向かいに座るユチョンが笑う。
「ジュンスが喋りすぎなんだってぇ〜」
「確かに喋りすぎでしたよ」
チャンミンの半笑いの声が飛んできた。
キッチンからジェジュンの笑い声がする。
「とにかく喋るよね、ジュンスは」
「わかることだけ言えばいいのに、わからないことにまで口を出しますからね」
「そんなことないよぉ。ちゃんと日本語喋れてたじゃん」
ユチョンとチャンミンが同時に吹き出した。
「ワケわかんないこともいっぱい言ってたよ、ジュンスぅ」
「そうですよ。ぼくの家がホントに宇宙にありますかっていうアレなんなんですか。まったくもって意味不明です。突然おれじゃダメか、とか言い出すし」
ふふ、と笑いながら、チャンミンのためにグラスを運んでくるジェジュン。
「がんばって喋ってたよ、ジュンスは。ねぇユノ?」
「うん。オンエアが楽しみだね。ジェジュンもよく笑ってて、明るい雰囲気をつくってたよ」
ユノはジェジュンを手伝ってぼくとユチョンにも飲み物を運んできてくれた。
その間もふたりは人目を憚らずラブラブトークを繰り広げ続ける。
「そう〜?ユノだってカッコよかったよぉ」
「ありがと。でもジェジュン、チャンミンに愛してますとか言ってなかった?」
「えー?そんなこと言ったっけぇ?ユノこそ、ユチョンの声がカッコイイとか言ったよね?」
あーあ、という顔をしてみせるチャンミンを見て笑うユチョン。
「それは、ユチョンの声が低くて男らしかったから…ジェジュンの声はいつだって綺麗だよ?」
「もうっやめてよユノ〜恥ずかしいなぁ。おれが愛してるのはおまえだけだよぉ〜」
その台詞のほうがよっぽど恥ずかしいような…
チャンミンはグラスに注がれたオレンジジュースを一気に飲み干して、立ち上がった。
「ごちそうさまでした!では、ぼくは部屋にいますので」
その様子をユチョンはずっと可笑しそうに見ている。
ユノは何も気づいていないらしく、にこやかに彼を送り出した。
「おぅ。お疲れ、チャンミン」
チャンミンが疲れてるのは仕事のせいだけじゃないだろう。
ユノとジェジュンは最近終始こんな感じだから…
そのふたりはチャンミンがいなくなったソファに並んで座り、DVDを観ようと話し合っている。
ユチョンはぼくを見て柔らかく笑った。
「ジュンス、お風呂入ってきなよ。ヒョンたちあんな感じだし、チャンミンもたぶん勉強だろうから」
「ユチョンは?」
「おれはちょっと書きたい気分」
あー、なるほどね。
熱心だなぁ。仕事終わりで疲れてるのに。
ぼくとユチョンは揃ってリビングを出て、それぞれの部屋の前で別れた。
着替えを取りに寝室へ入ると、チャンミンが着替えていた。
「あ、わっ。ご、ゴメン」
思わず扉を閉めようとすると、彼は笑う。
「変に意識しないでくださいよ。裸なんてフツーに見てるでしょう?」
そうだけどさぁ。
つき合うってなったら、やっぱり…
ちょっと意識しちゃわない?
チャンミンにとってはそういうものじゃないの?
「ラジオ、楽しかったですか?」
彼が話を続けようとするので、出ていくわけにもいかなくてそのまま恐る恐る部屋に入った。
「楽しかったよ、緊張したけどね。チャンミンは?」
「ヒョンが煩かったです」
「何ぃー?!」
ぼくだって、チャンミンのフォローをしようと思って結構がんばったんだよ!
なのにっ!
「真面目にやったよ、ちゃんと!」
「わかってますよ。でも煩いんです、声が」
「はぁー?!」
チャンミンは笑って、髪を整え、コンタクトを外す。
「今日もユス要素満載でしたね。ホントにあなたはユチョンヒョンがすきなんですから」
「ええー、そう?今日は寧ろチャンミンに絡みすぎたなって反省したんだけど。ていうかチャンミンこそ、ユチョンを褒めたじゃん!英語喋れてカッコイイとかって」
「だってカッコイイじゃないですか。ユチョンヒョンはあなたたちと違って謙虚で、あんまり自分を主張しませんから、ああいうときはまわりがフォローしないと」
えー、狡ーい。
ぼくも謙虚…ではないけど、がんばってるのにぃ!
「チャンミンこそユチョンがすきなんじゃん」
部屋着に着替え、眼鏡姿になっても、チャンミンはやっぱりカッコよかった。
ちょっと拗ねたぼくを見て、余裕の笑顔を浮かべる。
「なんですか、妬いてるんですか?」
「なっ、ちっ、違うよ!別に、ぼくは、ただ…」
「ジュンスヒョンのこともすきですよ」
なんだよぉ、それ!
ユチョンのこともすきなの?ぼくじゃなくてもいいの?
チャンミンはクローゼットを開けて、なかから着替えを取り出す。
「ぼくのまわしが素敵だって言ってくれましたね」
「んっ、え?いや、あれは…まぁ、その、がんばったから…」
「ぼくが太陽みたいだって」
そんなふうに言ったっけ?
「顔が赤かったからだよぉ!」
「ふぅーん。ま、そういうことにしておきましょう。はい、お風呂行ってらっしゃい」
そう言ってぼくに着替えを渡してほほえむチャンミン。
知ってるんだよね、ぼくがこの顔に弱いってこと。卑怯なやつ。
「ヒョンの後でぼくがシャワー浴び終わったら、ゲームしましょう」
あーあ、この一言でぼくの一日の疲れはぜんぶふっ飛んでしまうんだ。
チャンミンにいいようにコントロールされてるってわかってても、どうでもよくなってしまう。
しっかり者で、日本語がうまくて、ぼくを揶揄うのが趣味の意地悪なマンネ。
今日もだいすきだよ。
It has finished,
at 05:30 July 5,2012
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