小説:ミンス完全妄想編

□患者と医者【JJ】
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Parallel world 1. 【thereafter】
 キムジェジュン看護師


 誰かの特別になる。
 それが、自分の価値だと思って生きてきた。

 必要とされたい、という欲が人より強いのかもしれない。
 頼られるとうれしいし、世話焼き気質とでも言おうか、気遣うことを楽しんでいるようなところもある。
 もともと受け取ることより与えることがすきな気もする。
 そういう点でも、看護師という職業は自分には天職なのかなと思ったり。

 "誰か"にとっての"特別"。
 たとえばそれが生きる使命だったとしても、誰か、という不特定の存在がなんなのかわからなくて、特別、という曖昧な基準では難しくて。

 出逢う人をひとりひとり愛し、そのすべてを大切に思って生きてきた。
 そうすることでひとつでも多く、自分という人間を肯定してもらいたいからかもしれない。
 逆にいつも人と関わっていないと不安で。
 たくさんの友人と途切れることのない恋人を、必ずそばに置いていた。

 だけど、時々ふと考える。
 結局おれは、誰かの"特別"になれているんだろうか?

 「ジェジューン!」

 浮かれまくったその呼びかけに、雑誌を捲る手をとめて振り返る。

 広い部屋とはいえ、叫ばなくたってちゃんと聴こえるのに。
 自分の家なんだからなんとなくわかるでしょ?
 ダイニングのテーブルとリビングのソファなんてそう離れてないんだし。
 実際おれたち顔を上げれば目が合う距離にいるんだし。

 ユノはいつにも増して元気な足取りでドタバタと近づいてきて、がしっと加減知らずのちからでおれの肩を掴んだ。

 「ジェジュン、ジェジュン!なぁなぁ!」

 「なんだよ、騒がしいね」

 「あのさぁ、男同士で行っても変じゃないデートスポットってどこ?」

 おお。めずらしく懸命だな、おれに相談してくるなんて。
 女の子とつき合ってたときは、ロマンチックを履き違えたり記念日を間違えたりとんでもない贈りものをしたり、結構ヘマしてたのに。

 それだけ、特別な人ってことなのかな。
 さすがの彼も難しい恋だと自覚してるんだろう。
 男とつき合うのもはじめてだし。
 巻き込んでしまったから、とか一方的な責任を感じてるのかもしれない。

 ユノらしいね…
 昔からそういうとこ、変わってない。

 
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