小説:ミンス完全妄想編

□患者と医者【2U】
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Parallel world 1. 【thereafter】
 チョンユンホ先生とパクユチョンさん


 一目惚れ、というわけではなかった。

 最初に逢ったときは、顔ちいさいな、とか、医者にしてはイケメンだな、とか、そんな印象を抱いたような気がする。
 つまり、そんなものなのだ。
 恋に落ちるかどうかなんて、どこにそのきっかけがあるかなんて、誰にもわかりはしない。

 人見知りなおれが、新しくできたばかりの個人開業医のもとへ行ってみようと思ったのは、偏に通っていた総合病院の担当医がきらいだったせいである。

 奴は禿かけた中年のホモ野郎で、喘息の治療に行くたびにやたら時間をかけて診察されたり、生暖かい吐息を喉に吹きつけられたり…気分が悪くなるからこれ以上は言わないけど、とにかく気持ちの悪い医者だった。
 おれはそういう人の扱いに慣れていないわけじゃなかったからまだいいけど、もしジュンスみたいな患者があいつに診られていたらと思うとぞっとする。

 近くに家族もいなくて、発作を起こすたびに誰かしらに迷惑をかけてしまうので、通院をやめるわけにもいかず。
 近所に呼吸器系の病院ができたらいいのに、とずっと願っていた。
 ホモじゃない医者だったら多少適当な診断をされてもいいから。

 結果的にそのノンケの先生に惚れてしまうんだから皮肉な話だ。

 それはともかく、この人はホモではなさそうだ、というのが、彼を見たときの第一印象だった。
 爽やかで、人当たりの柔らかい人。
 その凛々しく癖のない顔に貼りついた、相手に警戒心を抱かせない優しい笑み。

 それでも、おれはしばらく彼に心を開かなかった。
 医者というものを信頼してなかったし、その必要もないと思っていた。
 別にそんなこと望まれてないだろう。
 向こうだって所詮仕事なわけだし。

 そんなふうに高を括っていたので、おれは叶いもしない恋に落とされる羽目になったのだ。
 これについては自業自得で、見通しが甘かった、と言わざるを得ない。

 とは言え、男性の、しかもノンケの医者相手に、これから恋に落ちるかもなんて見通しがどうして立てられようか?

 
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