小説:ミンス完全妄想編
□患者と医者【結】
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Parallel world 1. 【conclusion】
キムジュンスさんとシム先生
その日はよく晴れていた。
まったくいつになったら日曜日になるんだろうと途方に暮れるほどに、この一週間はものすごく長く感じた。
こんなときに限って忙しくもなく、変に緊張していたのもあって、一日に何回も時計を見てしまったり、そわそわして夜眠れなかったり…
つらい一週間だった。
自分の気持ちと向き合うしかない、過酷な時間だった。
気の遠くなるような現実を突きつけられ続けるのは、楽なことではない。
先週の日曜日、キムさんの家から帰った次の日、ぼくは家のことや溜まった仕事を脇に置いて、信頼に足る看護師さんについて飲み会に参加した。
いやになるほどやる気がないまま。
合コンというほどのものではないが、女性と食事をする機会すら何ヶ月もなかったので、新鮮は新鮮だった。
楽しかったし、ご飯も美味しかったし、女性陣も(そこそこ)可愛かった。
でもそれでも、心は不気味なほど落ちついていて、いつもどおりというか、他人にそれほど興味を持てずにいた。
外面はよく、中身は冷酷。
まわりに流されることのない、慣れ親しんだ自分。
つまり、ぼくはわかってしまった。
だって、何も感じることはなかったのだから。
恋に飢えてるんだったらもっと、女の子に目が行くはずなんじゃないのか?
彼女たちを見た途端に、足りない、ほしいという欲求に苛まれるはずなんじゃないのか?
その日一日じゅう、食べていても、喋っていても、あの人のことばかり考えていた。
口の端から零れたゼリーの透明な蜜とか、苦しそうに寝返りを打ったときの声とか…
何を見ても、何を聞いても、彼に纏わることしか思い出せなかった。
だからつまり、ぼくはわかってしまった。
結局、あの人は特別なんだってこと。
気の迷いでも、欲求不満でもなく、あの人だけが。
ああ。これからどうしよう…
細身のジーンズ、淡い色の緩いタンクトップに、黒のシャツ。
決して弾けすぎず、かと言って堅苦しすぎることもない、無難な服を選ぶ。
デートじゃないし、服なんてどうでもいいんだけど。
別に、キムさんだってそんなの気にしなさそうだし…
それでも逸る気持ちを抑えきれないまま、鏡の前でいつもより念入りに髪を整えた。