小説:ミンス完全妄想編
□患者と医者【転】
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Parallel world 1. 【denouement】
キムジュンスさんとシム先生
「随分くたびれた顔してるなぁ。大丈夫か?」
ぼくのぶんのご飯も買ってきてくださった優しい先輩は、たどりつくなりぼくの顔を見てそう言った。
彼がくるまでの40分間、必死に気持ちの整理をつけようとしていたが、無駄だった。
結局のところ、自分に何が起こったかわからなかったので、整理するどころか状況を把握することもできない。
なぜ、と問い続けることしかできなかった。
なぜ、あんなことになったのか。
なぜ自分が制御できなかったのか?
ぼくはもっと冷静な人間のはずだとか、男性相手にこんな気持ちになるわけないんだとか、夢だとか嘘だとか気の迷いだとか、とにかくそういうことを思えば思うほど、混乱するばかりだった。
誰も見ていなかったのだからなかったことにしてしまえばいいんだけど。
わかってるけど…
「チャンミン?」
ひょいっと覗き込まれ、返事を忘れていたことに気づく。
「あ、すいません。ちょっと考えごとを…何か飲みますか?他人の家ですけど」
「一応それも買ってきたよ。食べながら話そう。パクさんは?」
「彼は週末アメリカだそうですよ」
あーそうかそうか、と頷きながら、買ってきたお弁当をテーブルに置いて椅子に座るチョン先生。
たぶん、家族の話とかも聞いてるんだろう。
そこまで患者さんと親しくしてもまったく疲弊しないところがこの人のすごいところだ。
どうすごいかってつまり、立派で、超人的って意味ですけど。
「じゃあもしかしたら帰ってくるかもな。パクさんはジュンスくんのことかなり気にかけてるから」
また胸がズンと重くなる。
なんなんだ、この不愉快な感覚。
喉の奥をつまらせるような息苦しさ。
それを無視しようと唾を飲みながら、先輩の向かいに腰かけて弁当の蓋を開けた。
「仲よさそうですもんね」
「うん、高校の同級生なんだって。当時は結構内向的だったパクさんに分け隔てなく接してくれたのが、ジュンスくんだったみたいだよ」
ズン。
また重石が落ちてくる。
心なしか掻き込むご飯もあまりおいしくないように感じられた。