小説:ミンス完全妄想編

□患者と医者【承】
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Parallel world 1. 【development】
 キムジュンスさんとシム先生


 なんていうか、新鮮な気持ちだった。
 たぶん、この歳になるとなかなか新しい友人ができることがないので、そういうめずらしさからくるものだろう。
 しかもなかなか興味深い人種だ。

 キムジュンスさん。

 まわりにいないタイプかもしれない。
 素直で、単純で、わかりやすい。
 うちの犬よりよっぽど犬らしい人だった。
 しゅんと落ち込んでみせたかと思えば、次の瞬間にはパッと顔を輝かせてみせる。

 ゲームをしようと言ったときの彼の笑顔を思い出して、ふっと笑みが零れた。

 「先生、ご機嫌ですね」

 ギリギリの時間に着いて、慌ただしく書類の整理をしているぼくに、キム看護師がニヤニヤ顔で声をかけてきた。

 彼は今日もさらさらの髪をきちんと整えて、女の子みたいなすべすべの真っ白な肌をしている。

 「え?いや…別に」

 思い出し笑いを浮かべていたことに気づき、ちょっとバツが悪かった。
 彼はすこしそばに寄ってくる。

 「めずらしいですよね、こんなに遅くなるの。いつもは一時間近く早くくるのに」

 …何で知ってるんだ。ぼくがいちばん早くきてるのに。

 「ぼくも人間ですからね、そう毎日きちんと起きれるわけじゃありませんよ」

 「そうですね、先生も人間ですもんねぇ。昨日と同じスーツで出勤しちゃうこともありますよね〜」

 思わず自分のスーツを見下ろす。

 確かに昨日と同じだけど…しかたないけど…毎日白衣で仕事してるのに、そんなことまで気になるものか?

 「ああ、そうでしたっけ。うっかりしてました」

 「あっは、もう先生ったらぁ。うっかり同じネクタイも締めてきちゃったんですか?」

 ………目敏すぎて怖い。

 彼はするするっと近づいてきて、ぼくの間近でじっとみつめてきた。

 「いや、これは、別に…」

 「ふぅ〜ん。ブルガリブラックかぁ」

 「は?」

 
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