小説:ミンス両想い編
□Love in the ice
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Chapter 24. Love in the ice
誰にでも、眠れない夜のひとつやふたつ、あると思う。
ぼくは基本的には前向きな人間だけど、それでも様々な悩みや哀しみから、眠りに落ちられない夜をいくつか経験してきた。
そんなときには、ジュノに電話して話を聞いてもらったり、音楽を聴いて気持ちを高めたりして、長い孤独な時間を埋める。
そうしているうちに朝がきて、いつの間にかまた新しい心ではじまれるような、清々しい気持ちで一日を迎えることができるのだ。
だからぼくは、悩みを引きずって何日も眠れなくなるなんてことはなかった。
心を切り換えるのは得意なほうだと思っていた。
でも、あの日は何か違ってたんだ。
あんなふうに眠れなくなるなんて、これまで一度もなかったし、ぼくの心はまるで…
まるで…
「ジュンスぅ〜!オンエア観るよ、ゲームやめてこっちおいで」
自分を呼ぶ声に思考を遮られ、手元で発光する手のひらサイズの機械から顔を上げて、すこし離れたところにいるユチョンと目を合わせた。
彼は既にテレビの前のソファに腰かけていて、そのとなりにはチャンミンがいる。
ドキッ、と胸が鳴る。
つき合いはじめればすこしずつ慣れるものだと思いながら、もうすぐ五ヶ月。
未だにチャンミンが視界に入るだけで、こうして息がとまる思いがする。
それでも、すこしずつ変わってきてはいるのかもしれない。
チャンミンといるときの、ぼくの気持ち。
ゲームを切って、立ち上がる。
ユチョンに手招かれてそばに寄ると、チャンミンが座ったままぼくを仰ぎ見てきた。
目が合うだけでまた、心が踊る。
「ジュンス、ほら座って座って」
「ん?ああ…うん」
ユチョンが自分とチャンミンの間にスペースをつくり、そこをポンポンと叩いた。
ぼくがそこに座ろうとすると、チャンミンがそれを避けるように腰を上げる。
「何か淹れましょうか。飲みます?」
ユチョンは立ち上がった彼を見上げてほほえんだ。
「ありがと、おれコーヒー飲みたいな」
「ホットでいいですか。ジュンスヒョンは?」